こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
建物の減価償却で用いる耐用年数は、原則として1棟の建物につき1つ適用されます。
しかし、「1階がクリニックで2階以上が住居」のように複数の用途で利用されている場合や、
増築によって複数の構造が混在している場合、どの耐用年数を適用すべきか迷うことが
あります。今回は、このような複合建物の耐用年数の正しい算定方法を解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
建物が複数の「用途」で利用されている場合
1棟の建物が複数の用途で利用されている場合、原則として
その建物の主たる用途に応じた耐用年数を全体に適用します 。
主たる用途は、各用途の床面積の割合、収益割合、実際の使用実態などを総合的に
考慮して判定します 。
【具体例】鉄筋コンクリート造のビル
- 地上2~3F: 貸事務所
- 地上1F: 診療所
- 地下1F: 駐車場
この場合、主たる用途は面積の広い「貸事務所」と考えられます。鉄筋コンクリート造の
「事務所用」の耐用年数は50年です。
一方、1階の「診療所」部分は「病院・診療所用建物」に該当し、
同じ構造(鉄筋コンクリート造)の場合、耐用年数は 39年 です。
ただし、建物全体で一体的に使用されている場合には、主たる用途である
「事務所用(50年)」を全体に適用します。
《例外》特別な内部造作がある場合
主たる用途にかかわらず、特定の用途のために特別な内部造作や設備が施されている部分は、
その部分だけを区分して異なる耐用年数を適用できます 。
- 上記ビルの3階が保育所で、特別な内部造作(厨房設備など)がある場合
この場合、3階部分は「飲食店用設備を有する建物」とみなされ、
鉄筋コンクリート造であれば 39年(病院・店舗用) を適用、
その他の階は「事務所用建物(50年)」として区分します。
混構造の建物の場合
1棟の建物が鉄筋コンクリート造と木造など、複数の構造で構成されている場合、
社会通念上、別の建物とみなせるかが判断のポイントになります 。
【具体例1】既存の建物に増築した場合(事務所)
- 地上4F(増築部分): 木造
- 地上1~3F(既存部分): 鉄筋コンクリート造
この場合、構造・用途が明確に異なり、独立していると認められれば、
増築部分(木造)は「木造・事務所用」24年、
既存部分(RC造)は「鉄筋コンクリート造・事務所用」50年と、構造ごとに区分して
算定します。
【具体例2】高層ビル(賃貸住宅用)
- 地上3~15F: 金属造(4mm超)
- 地下1F~地上2F: 鉄筋コンクリート造(基礎を兼ねる)
この場合、低層階の鉄筋コンクリート造部分は建物の基礎としての役割が強く、
上層階と一体とみなされます。そのため、建物全体を主たる構造である
「金属造(4mm超)・住宅用」の34年で判定します 。
まとめ
複合建物の耐用年数は、「主たる用途は何か」「別の建物とみなせるか」という視点で判断します。
誤った耐用年数を適用すると、税務調査で指摘を受ける可能性がありますので、
判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
ペンデル税理士法人は、税務顧問を通じ、顧問先の皆さまの経営を長期的に支援しています。