こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
ChatGPTなどの生成AIは、業務効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
しかし、その手軽さゆえに、企業が許可していないAIツールを従業員が個人的に
業務で利用してしまう「シャドーAI」が問題となっています。
特に、患者様の機微な個人情報を扱うクリニックにとって、シャドーAIは
深刻な情報漏洩リスクに直結します。
今回は、そのリスクと、AIを安全に活用するための対策について解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
「シャドーAI」が引き起こす2大リスク
1.機密情報の漏洩
一部の無料AIサービスでは、入力内容がAIの精度向上(再学習)のために
利用される場合があります。
従業員が安易に患者情報や経営に関する機密情報を入力した場合、
それが外部に流出する危険性があります。
実際に、社内で生成AIを私的に利用した結果、機密情報が外部に漏えいした事例も
報告されています。
2.ハルシネーション(もっともらしい嘘)による判断ミス
生成AIは、事実に基づかない情報を、あたかも正確であるかのように生成することがあります
(ハルシネーション=虚構の生成)。
AIの回答を鵜呑みにして業務上の判断を下すと、大きな間違いに繋がる恐れがあります。
なぜ「シャドーAI」は発生するのか?
背景には、経営層の慎重な姿勢と、
現場の「とにかく使ってみたい」というニーズのギャップがあります。
また、従業員自身も「機密情報を入力してはいけない」といった基本的なルールを
知らないケースが多く、明確な指針や教育が不可欠です。
クリニックが取るべき3つの安全対策
リスクを恐れてAIの利用を全面的に禁止するのは現実的ではありません。
むしろ、安全な環境を整備し、積極的に活用する道を模索すべきです。
- AI利用ガイドラインの策定
まず、AI利用に関する明確なルールを定めます。
「入力して良い情報」と「絶対に入力してはいけない情報(患者情報、経営データ、
従業員情報など)」を明確に区分し、社内ルールや就業規則に反映することを検討しましょう。
- 従業員への教育
策定したガイドラインを全従業員に周知徹底し、情報セキュリティに関する研修を
定期的に実施します。特に、デジタルに慣れている若い世代には、リスク教育が重要です。
- 法人向け・安全なAIツールの導入
「ChatGPT Enterprise」や「Microsoft 365 Copilot」などの法人向けAIサービスでは、
入力データがAIの再学習に利用されず、通信や保存データも企業レベルで保護される
仕組みが整っています。
こうしたツールを導入し、「安心して使える公式な環境」を提供することが、
シャドーAIの最も効果的な防止策となります。
まとめ
AIは、正しく使えば経営の強力なパートナーとなります。
シャドーAIのリスクを「禁止」で封じ込めるのではなく、「理解」「教育」「環境整備」という
三本柱で管理することが重要です。
安全なAI活用を進めることこそ、これからのクリニック経営において競争力を高める鍵となるでしょう。
ペンデル税理士法人は、税務顧問を通じ、顧問先の皆さまの経営を長期的に支援しています。