こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
「明日、受付スタッフが急病で足りない」「インフルエンザワクチン接種の補助要員が欲しい」。
こうした突発的な人手不足に対し、「タイミー」などの
スポットワーク(隙間バイト)仲介サービスを活用するクリニックが徐々に増えています。
面接なしですぐに人を確保できる利便性は画期的ですが、
そこには「雇用」としての法的責任が発生することを忘れてはいけません。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
「応募=契約成立」という新ルール
従来、スポットワーク業界では「実際に働き始めた時点で契約成立」という慣習があり、
直前のキャンセル(企業都合)があっても補償がなされないケースがありました。
しかし、厚生労働省の見解を受け、主要な仲介サービス事業者は規約を変更しつつあります。
「求職者が応募した時点で労働契約が成立する」という解釈が標準化され、
事業主(クリニック)の都合で勤務を取りやめる場合、
労働基準法に基づく「休業手当(平均賃金の6割以上、サービスによっては満額)」の支払いが
求められるようになっています。
クリニックが注意すべき5つのポイント
たった数時間のアルバイトであっても、法律上は立派な「労働者」です。
以下の対応が漏れていると、労基署からの指導対象となります。
- 労働条件通知書の交付
短時間の雇用であっても、賃金、時間、業務内容を書面(メール等可)で
明示する必要があります。
仲介アプリ上で自動生成される場合も多いですが、
法定の明示事項がすべて記載されているか、クリニック側で確認する必要があります。
- 準備時間も労働時間
事業主の指示に基づく着替えや業務説明などの準備行為は労働時間に該当します。
「10分前に来て着替えて」と指示し、その分の給与を払わないのは違法です。
- 安全衛生教育
医療現場には感染リスクや医療機器による危険があります。
雇い入れ時に実際に従事させる業務に応じた、安全教育を行う義務があります。
- 労災保険の適用
スポットワーカーも原則として労災保険の対象です。
サービスの契約形態によっては、アプリ側で労災保険に加入している場合もあるため、
事前に確認しておくことが重要です。
通勤中の事故や、業務中の針刺し事故などはクリニックの労災保険を使います。
- ハラスメント対策
「1日だけだから」といって、院長や古株スタッフが高圧的な態度を取れば
ハラスメントになります。
スポットワーカーにも、スタッフと同様にパワハラ防止措置が適用されます。
人手不足解消の切り札にするために
スポットワークは便利な反面、労務管理の難易度は上がります。
「うちは小さなクリニックだから関係ない」という考えは通用しません。
アプリ運営会社は法令順守を徹底しており、ワーカーからの通報内容によっては、
アプリ運営会社からアカウント制限などの措置が取られる場合もあります。
便利なツールを安全に使いこなすためには、就業規則やマニュアルの整備が不可欠です。
ペンデルグループでは、顧問先の要望に応じ、
新しい働き方に対応した労務管理をサポートします。
採用難にお悩みの院長先生は、ぜひご相談ください。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
厚生労働省:労働条件の明示が強化されます
労働局:休業手当(平均賃金の60%以上)の計算方法