こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
医療機関や介護施設など、多くの事業所で採用されているシフト制。流動的な勤務形態のため、「年次有給休暇(年休)の日数をどう決めれば良いのか」「どのように取得させれば良いのか」といったご相談をよく受けます。本記事では、シフト制で働く従業員の年休付与に関する基本的なルールと、実務上のポイントを解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
年次有給休暇の基本原則
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。付与の条件は以下の2つを満たすことです。
- 雇い入れの日から6ヵ月間継続勤務していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤していること
この条件を満たした労働者には、10日間の年休が付与されます。以降、勤続年数に応じて付与日数は増加します。年次有給休暇は正社員だけでなく、パート・アルバイトも対象ですが、週の所定労働日数や勤務時間に応じて付与日数は比例して決まります。
シフト制における年休付与日数の決定方法
シフト制のように週ごとの勤務日数が変動する場合、年次有給休暇の付与日数は、週の所定労働日数を基準に算出する比例付与が原則です。
労働基準法には、週の所定労働日数に応じた付与日数表が定められています。しかし、週の労働日数が固定されていないシフト制の場合、実務上は年間の勤務日数で判断する方が一般的です。
【年間の所定労働日数に応じた比例付与日数】
- 217日以上: 通常の労働者と同じ(10日~20日)
- 169日~216日: 7日~15日
- 121日~168日: 5日~11日
- 73日~120日: 3日~7日
- 48日~72日: 1日~3日
初回6か月の付与時は、予定ではなく実際に出勤した日数を基準に、出勤率が8割以上であるか確認します。その後、週の所定労働日数に応じた付与日数表に基づき、年休日数を確定します。
年5日の取得義務と計画的付与
2019年4月の法改正により、年休が10日以上付与される全ての労働者に対し、企業は年5日の年休を確実に取得させる義務を負っています。これはシフト制の従業員も例外ではありません。
- 時季指定義務
従業員が自主的に5日以上取得していない場合、企業側が時季を指定して取得させなければなりません。 - 計画的付与
年次有給休暇のうち、法定の取得義務(年5日)を超える部分については、労使協定を締結することで企業が計画的に休暇日を割り振ることが可能です。これにより、繁忙期や閑散期に合わせた柔軟な休暇運用ができます。閑散期などに一斉付与する方法は、シフト管理の負担軽減にも繋がります。
まとめ
シフト制だから年休が取れないということは法律上認められません。年休の付与日数や取得方法は、週の所定労働日数や勤務時間に応じて適正に計算する必要があります。また、年5日の取得義務や時季指定義務を遵守することが重要です。年次有給休暇管理簿を整備し、取得状況を正確に把握しましょう。柔軟な働き方を支える適切な労務管理は、従業員の定着率向上にも繋がります。お困りの際は、お気軽にペンデル税理士法人までご相談ください。