こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
近年、経営状況は黒字であるにもかかわらず、後継者が見つからないために
廃業を選択する「黒字廃業」が社会的な課題となっています。
2024年には休廃業・解散件数が約7万件に達し、その半数以上が黒字経営だったという
データもあります。
これは、院長の高齢化が進むクリニックや医療法人にとっても他人事ではありません。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

医療機関における事業承継の課題
中小企業白書によると、休廃業する経営者の平均年齢は上昇傾向にあり、
特に「70代以上」の経営者による休廃業が顕著です。
これは、事業承継の準備が間に合わず、高齢を理由に廃業せざるを得ないケースが
増えていることを示唆しています。
1. 後継者不在の深刻化
かつては親族内での承継が一般的でしたが、価値観の多様化などから、
子どもが後を継がないケースが増えています。
帝国データバンクの調査では後継者不在率は全体として減少傾向にあるものの、
承継の準備ができていないまま時間だけが過ぎてしまうリスクは依然として高い状況です。
2. 倒産の背景にある構造的問題
事業承継問題に加え、近年の企業倒産は人手不足や物価高騰が大きな原因となっています。
人件費や材料費の上昇分を診療報酬に簡単には転嫁できない医療機関にとって、
経営環境は厳しさを増しており、事業継続そのものが困難になるケースも少なくありません。
廃業リスクを回避するために今から始めるべきこと
大切なクリニックとスタッフ、そして地域の患者様を守るためにも、
廃業という選択肢を回避するための準備が不可欠です。
- 事業承継計画の「見える化」
漠然と考えるだけでなく、いつ、誰に、どのように事業を引き継ぐのかを
具体的な計画書に落とし込むことが第一歩です。
自院の強み・弱みを分析し、資産状況を正確に把握することから始めましょう。
- 第三者承継(M&A)という選択肢
親族や院内に適任な後継者がいない場合でも、外部の医師や医療法人に
事業を引き継ぐ「第三者承継」が有効な解決策となります。
M&Aを活用することで、従業員の雇用や地域医療の継続が可能になります。
- 専門家への早期相談
事業承継には、税務、法務、労務など多岐にわたる専門知識が必要です。
「経営者保証ガイドライン」の活用や各種補助金制度の利用など、
専門家と連携することで有利に進められるケースも多々あります。
まとめ
事業承継は「まだ先」と思っているうちに、
準備の遅れが取り返しのつかないリスクにつながります。
しかし早めに取り組めば、
- 地域の患者様に安心を提供し続ける
- スタッフの雇用を守る
- 院長ご自身のライフプランを安心して描ける
といった未来につながります。
ぜひ今のうちから現状把握を進め、承継の選択肢を整理していきましょう。
ペンデル税理士法人 医業経営支援部が全力でサポートいたします。
承継準備度チェックリスト
以下の項目に、✓をつけてご確認ください。
- 後継者候補の有無を検討している(親族・院内スタッフ・第三者承継を含む)
- 自院の資産・負債状況を把握している(借入残高、不動産、医療機器など)
- 自院の経営課題や強みを整理している(診療体制・患者層・地域での役割など)
- 承継に関わる税務・法務リスクを理解している(相続税、法人運営ルールなど)
- 承継の大まかなスケジュールを描いている(何年後に誰へ、どのように引き継ぐか)
✓が 3つ以下 の場合は、早期に承継準備を進めることをおすすめします。
【参考】
2025年版 「中小企業白書」概要