こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
医療機関や診療所において、窓口での現金収受や医薬品の在庫管理、複雑なレセプト請求など、
スタッフへの全幅の信頼なしには日々の運営は成り立ちません。
しかし、あまり考えたくはないことですが、院内で「横領」や「着服」が発生してしまう
ケースは、決して他人事ではありません。
不祥事が発覚した際、院長先生や理事長先生は、裏切られた精神的なショックの中でも、
速やかに被害拡大を防止し、事実関係の調査を進める必要があります。
こうした「事後対策」における加害者との交渉や損害賠償請求、法的手続きそのものは
弁護士の領域となりますが、経営者が同時に直面するのが「税務上の処理」という
もう一つの課題です。
被害額である「損失」と、相手への「損害賠償請求権(収入)」をどのタイミングで
帳簿に計上すべきか、その判断がその後の税負担を大きく左右することになります。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
税務で論じられる「3つの学説」と経営的リスク
民法上、損害賠償請求は「損害と加害者を知った時」から可能とされていますが、
法人税実務上は、主に以下のような考え方に整理されます。
- 同時両建説(どうじりょうだてせつ)
横領による現実的な損失を認識すると同時に、法律上発生している賠償請求権を
同額の「収入」として計上する考え方です。
- 異時両建説(いじりょうだてせつ)
損失は「損害を知った事業年度」に計上しますが、収入(賠償金)については、
賠償額の同意や判決の確定など、具体的な請求権が実現した時点で認識します。
- 損失確定説(そんしつかくていせつ)
すぐには損益を認識せず、賠償請求が行使できるか見極めた上で、
正味(実質)の損失額が確定した時点で計上します。
ここで経営者にとって最も「酷」なのが同時両建説です。お金を盗まれて手元にないのに、
税務上、賠償請求権の実現可能性が高いと判断された場合には、
「同額の収入が計上されるべき」とされ、回収もできていない被害額に対して
税金が発生してしまう可能性があるからです。
通達の運用と「身内」による不正の難しさ
国税庁の法人税基本通達では、不法行為の相手方が第三者である場合、賠償金は
その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金とする取扱いが
示されています(異時両建説(または現金基準)による処理)。
これは、賠償責任の有無に争いがあることが多く、確定的な収益と言い難い面があるためです。
しかし、問題は「役員や従業員などの内部関係者(いわゆる身内)」による不正の場合です。
通達には明記がなく、ケース・バイ・ケースの判断となります。
役員等の場合、その行為が個人的なものか法人としてのものか峻別しにくいケースも多く、
税務調査で「同時両建(即座に収入計上)」を求められるリスクが残ります。
ペンデルによる「不正を起こさせない収入管理」の支援
不祥事への対応は、判断ミスが将来の税務リスクへと直結します。
ペンデル税理士法人医業経営支援部では、不祥事発覚後の法的な回収業務については
専門の弁護士と連携しつつ、税理士法人としては「そもそも起こさせない仕組み
(内部統制)」の構築こそが、クリニックを守る最善の防衛策であると考えています。
具体的には、不正が入り込む余地を物理的・システム的に排除する『収入管理の適正化』を
ご提案しています。
そして、万が一被害に遭われた際には、弁護士による法的な解決を前提とし、
その結果を「税務上最も適正、かつ不利にならないタイミング」で申告に反映できるよう、
エビデンスの整理を徹底サポートいたします。
不穏な動きを察知した際や、管理体制を根本から強化したいとお考えの際は、
迷わずペンデルへご相談ください。貴院の資産と、院長先生が築き上げたスタッフとの
信頼関係を守るため、誠実に対応いたします。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
国税庁:法人税基本通達2-1-43(損害賠償金等の帰属の時期)
税務大学校:不法行為に係る損害賠償金等の帰属の時期(矢田教授)(PDF)