こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
クリニックとともにMS法人(メディカルサービス法人)を運営されている院長先生にとって、ご勇退を見据えた「事業承継」は避けて通れない課題です。特に、MS法人の業績が好調で自社の株式評価額が高騰している場合、後継者に課される贈与税や相続税が数千万円から数億円単位に達し、納税資金の確保が承継の大きなハードルとなります。
このような、税負担によって事業承継が頓挫する事態を防ぐために設けられたのが「法人版事業承継税制(特例措置)」です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
■ 特例措置の大きなメリット
この特例をMS法人の株式承継に活用し、一定の要件を満たして特例措置の適用を受けた場合、対象株式に係る贈与税・相続税は100%納税猶予の対象となります。さらに、承継後も代表者として経営を続け、対象株式を継続して保有するなどの要件を満たしたうえで、次世代へ円滑に承継されるなどの一定の場合には、猶予されていた税額が免除されます。
また、令和7年度の税制改正により、後継者の役員就任要件が大幅に緩和されました。従来は「承継前3年以上の役員就任」が必要でしたが、「贈与時までに役員へ就任していればよい」こととなり、承継の直前に後継者が決まったケースでも利用しやすくなっています。 さらに、本来であれば承継後5年間の平均で雇用の8割を維持する必要がありますが、特例措置では雇用要件を満たせなかった場合でも、その理由などを記載した報告を行うことで、直ちに猶予が打ち切られる仕組みではありません。このように、制度全体として利用しやすい内容へと見直されています。
■ 迫りくる期限と実務上の注意点
絶大なメリットがある一方で、この特例措置の適用には期限が迫っています。 特例承継計画の提出期限は「令和9年(2027年)9月30日」、贈与や相続の実行期限は「令和9年12月31日」です。この期限を過ぎると、特例措置は利用できなくなります。
また、適用を受けた後も、承継後5年間は毎年の報告義務があります。もし途中で株式を売却するなど継続要件から外れてしまった場合には、猶予されていた税額に加え、利子税を一括で納付しなければならないというリスク(デメリット)も存在します。
■ M&Aとの比較検討を
親族内や法人内に後継者がいない場合や、株式評価額が極めて高い局面では、M&A(第三者への承継)も有力な選択肢です。M&Aであれば、オーナーは売却益を手にしてリタイアでき、税負担も株式譲渡益に対して原則として約20.315%の譲渡所得課税が適用されます。
「親族内で法人を守り続ける」ための特例措置を活用するのか、M&Aを選択するのか。最適な方法は、後継者の有無や株式評価額、将来の経営ビジョンによって異なります。 まずは自社の株式評価額を正確に試算し、現状を把握することが第一歩です。そのうえで、自社に適した承継方法を早めに検討することが重要です。
MS法人の株式承継をはじめ、医療法人を含めたグループ全体の事業承継対策のロードマップ策定は、医療ビジネスの経営管理を専門的にサポートするペンデル税理士法人へぜひお気軽にご相談ください。

(参考)
中小企業庁:「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる特例承継計画」
国税庁:タックスアンサー No.4148「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等のあらまし」