こんにちは、ペンデル税理士法人 医業経営支援部 親泊です。
前回は、「税務調査の流れと対応」をお話しさせていただきました。
今回は、「税務調査官が気にするポイント」をお話いたします。
お忙しい先生で、コラムを読み込んで対策する時間がないけれど、
心配だから一度相談に乗ってほしい!という先生は、まずはご相談いただければ、
私たちが可能な限りのサポートをさせていただきます。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
税務調査が入ったら、どこを重点的に見られるのかって気になりますよね。
実は、税務調査官には「ここ、ちょっと怪しいかも」と感じるポイントがいくつかあります。
この章では、税務調査でよくチェックされる項目や、
特に注意が必要なトラブルについて詳しく説明していきます。
収入除外や経費の水増し
税務調査で一番よく指摘されるのは、収入の計上漏れや経費の水増しです。
特に、収入を意図的に除外したり、実際には使っていない経費を計上している場合は、
重加算税が課せられることがあります。
税務調査官は、こういった不正行為を見つけるために、いくつかのポイントに目を光らせています。
例えば、窓口での現金収入(患者の自己負担金や自由診療収入)は、
現金管理がきちんと行われているかを重点的にチェックされます。
現金出納帳と実際の現金残高が合っていない場合、
収入を除外しているのではないかと疑われることがあります。
特に、調査当日の現金残高が帳簿と一致していないと、
税務調査官は「何かごまかしてるんじゃない?」と厳しく追及してきます。
また、期末近くに未収金が発生している場合、
その金額がちゃんと収入として計上されているかもチェックポイントです。
例えば、社会保険診療収入は、保険適用の診療報酬が公的機関から振り込まれるため、
除外は難しいですが、患者の自己負担金や自由診療収入については、
管理が甘いと見られがちです。
技工所関連のトラブル
歯科医院に特有のポイントとして、技工所との取引に関する記録がよくチェックされます。
技工所に技工指示書を出しているのに、その収入が計上されていなかったり、
技工所からの納品書や請求書があるのに、収入が計上されていないケースが問題になります。
税務調査官は、技工所からの納品書と医院の予約帳を突き合わせて、
収入の計上漏れがないかをしっかり確認します。
特に注意したいのが、自由診療収入です。
保険診療と違って、窓口での現金取引が多いため、計上漏れが発生しやすい項目です。
技工所の記録や予約帳と照らし合わせて、きちんとした管理ができているか
確認しておきましょう。
家事関連費の混在
次に、税務調査官がよく気にするのが、
事業経費に家事関連費が混ざっていないかという点です。
家事関連費というのは、
簡単に言うと「プライベートな支出を事業経費として計上していないか」ということです。
特に、自宅と医院が併設されている場合、
例えば水道光熱費や通信費などの経費に、自宅分が混ざってしまうことがあります。
交際費については、家族との食事やプライベートの旅行などが含まれていないか、
税務調査官はしっかりとチェックします。
光熱費についても、もし自宅と医院で同じ光熱費のメーターを使っている場合は、
事業部分と自宅部分をきちんと按分して経費を計上する必要があります。
この按分が適切に行われていないと、指摘されることがあるので、
合理的な計算根拠を用意しておくと安心です。
給与や専従者給与の問題
個人事業の場合、専従者給与(家族が医院で働いている場合の給与)についても
よく調査されます。
税務調査官は、専従者が本当に実際に働いているのか、
また、その給与が適正な金額で支払われているのかを厳しくチェックします。
例えば、タイムカードや給与明細がきちんと整備されているかどうかも
よく見られるポイントです。
タイムカードの打刻が不十分だったり、実際には働いていない親族に給与を支払っていると
判断されると、その給与が認められなくなることがあります。
従業員に支払った給与についても、アルバイトなどが実際に勤務しているかどうか、
扶養控除等申告書やタイムカードで確認されます。
特に、現金で支払っている場合、
架空の人件費を計上しているのではないかと疑われることが多いです。
また、専従者給与を支給するためには、税務署への届出が必要です。
届出を行っていない場合や、届出内容と異なる方法で支給していると、
専従者給与として経費計上が認められないことがあるので注意が必要です。
接待交際費や旅費交通費の管理
税務調査では、接待交際費や旅費交通費の使い方についても厳しくチェックされます。
例えば、飲食代やゴルフのプレー費、さらにはクラブでの飲食代など、
事業に関連しないプライベートな支出が混ざっていないかを確認されます。
例えば、「歯科医師会のゴルフコンペに参加した」という場合でも、
事業と関連性があることを証明できなければ、交際費として認められないことがあります。
そのため、事業に関係する接待やゴルフコンペなどの支出については、
参加者や目的を明確にして証拠を残しておくことが大切です。
領収書だけでなく、コンペの案内状や参加者リストなども保管しておくと、調査の際にスムーズです。
また、出張の名目でプライベートな旅行を経費に計上していないかもチェックされます。
業務と観光を兼ねて旅行に行く場合、観光部分にかかる費用は経費として認められません。
そのため、業務で出張した部分と観光部分をしっかりと按分しておく必要があります。
減価償却費や修繕費の処理
減価償却費や修繕費の処理についても、税務調査ではよくチェックされます。
特に、高額な医療機器や設備を購入した場合、その費用が正しく処理されているかが重要です。
例えば、機器の納品日が期末をまたいでいる場合、減価償却の開始時期がいつからかを確認されます。
また、高額な修繕費がかかった場合、それが本当に修繕費として全額計上できるのか、
あるいは資産計上する必要があるのかを調査されます。
このように、修繕費と資本的支出の区別は税務調査でよく問題になる点です。
設備の修理や建物の改修などが、資産の価値を増加させるものなのか、
それとも単なる維持管理のための修理なのかによって、取り扱いが異なるため、
判断に迷う場合は税理士に相談すると良いでしょう。
現金管理や預貯金のチェック
税務調査では、現金の管理も非常に重要です。
現金出納帳を日々きちんとつけており、実際の現金残高と一致しているかを確認されます。
現金管理が甘いと、それだけで税務署の印象が悪くなり、調査が長引く可能性があります。
また、預貯金の動きについても、税務署は注目します。
例えば、銀行口座の残高が帳簿と一致していない場合や、
口座間の不明な資金移動がある場合、さらに深掘りされる可能性があります。
調査前に残高証明を取り、帳簿との整合性を確認しておくと良いです。
シリーズ3回目はここまでです。
今回は、「よくあるトラブルと税務調査官が気にするポイント」をお話しさせていただきました。
次回は、「税務調査後の対応と対策」をお話しさせていただきます。
ご不明な点やご不安な点がございましたら、いつでもご連絡ください。