こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部 親泊です。
本日は、診療所の閉院についてお話しいたします。
開業の時期があるように、いずれ閉院を迎える日も来るものです。
いざその時が来て慌てることがないように
閉院時の流れを、事前に確認していきましょう。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
閉院までの大まかな流れ
まず、閉院するにあたり、次の項目を検討していきましょう。
実際の契約内容によって、開始時期が前後することがありますので
契約書なども併せて確認の上、進める必要があります。
時期 | 検討項目 |
---|---|
6か月前 | 賃貸契約の確認と家主への退去通知、 オンライン資格確認端末の財産処分申請(補助金を用いた場合)を行います |
3~4か月前 | 職員へ閉院の告知を行います。 必要に応じて、患者さんへの告知DM(ダイレクトメール)の準備をします |
3か月前 | 医師会・学会・医薬品会社やリース・割賦会社、患者さん、借入先に閉院の告知を行い 患者さんの引継ぎ先の検討と根回しを始めます。 また、医療機器の処分方法、内装解体業者の選定、その他関係業者への連絡もこの時期に行います。 患者さんへのDMを発送する場合は、この時期以降に行います |
1か月前 | 電気・ガス・水道・郵便・電話・インターネットなどの 公共サービスの解約準備を行います |
閉院時 | 保健所や厚生局、その他の行政機関へ閉院の届出を行い、 カルテなど保管が必要な書類の移送も手配します。 また、最後のレセプト提出後、内装解体工事を実施します |
解体終了後 | テナントを返却します |
なお、医療法人診療所の場合、上記の手続きに加え、都道府県庁への届出や認可が必要です。
主な手続きとしては、社員総会の決議、解散許可申請、医療審議会での審議
解散・清算人の登記、清算手続き、知事への報告、清算結了登記などが含まれます。
法人の決算時期により手続きにかかる時間は異なりますが
全て完了するまでに最大で2年程度かかる場合があります。
工程ごとの主な費用
閉院に際し、主に次の工程で大きな費用が発生します。
内装解体工事
レントゲン機器の有無や、テナントの階数、工事可能な時間帯によって
費用は異なりますが、坪単価は約10~20万円です。
例えば30坪のテナントであれば、300万~600万円程度を見込んでおきましょう。
医療機器の処分
設備が新しい場合は売却を、古いものは譲渡や廃棄を検討します。
売却する場合は複数の中古買い取り業者に見積もりを依頼するのが良いでしょう。
複数の機器をまとめて依頼することで妥当な金額の確認ができ、
古い機器も引き取ってもらえる業者が見つかる可能性があります。
また、医療機器は「産業廃棄物」に該当するため、廃棄する際は専門業者に依頼するか、
内装解体業者に併せて依頼すると良いでしょう。
なお、医療機器を知人などへ譲渡する場合、薬機法施行規則第170条に基づき、
事前に製造販売業者に通知する必要があるため、ご注意ください。
医療法人の解散手続き
医療法人の場合、解散手続きを行政書士や司法書士に依頼する場合、
費用は50~60万円程度です。
カルテなどの保管費用
カルテなどの書類保管は、ご自宅で保管できなければ、保管会社へ発送や
コンテナボックスの利用など、量や期間に応じて費用が発生します。
基本的には閉院後にカルテなどを出し入れすることは少ないですが
必要に応じて廃棄方法などを考慮して保管手続きを進めると良いでしょう。
より円滑な引退に向けて
閉院にかかる予想以上の費用に驚かれるかもしれません。
資金が準備できていない場合や、患者様が減少し余裕がない場合など
不安を感じる先生も少なくありません。
また、特に長く勤務してくれたスタッフの今後についても悩むところでしょう。
そのような場合は、クリニックの「承継」を検討されてはいかがでしょうか。
クリニックの資産やスタッフ、患者様を引き継ぐことで
円満な引退が可能になる場合が多くあります。
これまで築き上げてきたクリニックを、次の世代に引き継ぐことは
患者様にもご安心いただける良い方法と言えるでしょう。
「自分のクリニックを引き継いでくれる人が見つかるだろうか?」と
心配される先生は多いです。
以前はご親族や医局の後輩にしか承継しないケースが一般的でしたが
最近は第三者承継も増えてきています。
また、2035年ごろに後継者問題がピークを迎えるとも言われており
思っている以上に承継の問い合わせが来る可能性があります。
次の3つに該当していると、承継がスムーズに進む可能性が高くなります。
クリニックが黒字経営である
院外処方か、近隣に調剤薬局がある
周辺人口が、横ばいか増加している
いくつか該当しない場合でも、ぜひ専門家にご相談ください。
閉院や承継には、重大な決心が必要となります。
もし、閉院・事業承継に関するお悩みがございましたら
ペンデル税理士法人 医業経営支援部が
クリニックの閉院・事業承継に関するサポートを行っておりますので
どうぞお気軽にご相談ください。