こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
「先生、もう辞めます!」そう言われた数日後、「やっぱり考え直しました…」。
こんなやり取りに、頭を抱えてはいませんか?
まるでオオカミ少年のような職員の言動に、クリニックの雰囲気は悪くなる一方。
他の真面目な職員たちへの示しもつかない。
これは、単なる「お騒がせ職員」の問題ではありません。
クリニックの根幹を揺るがしかねない、重大なリスクなのです。
しかし、ご安心ください。
このコラムでは、そんな院長の悩みを解決する、具体的かつ効果的なアプローチを
お伝えします。もう二度と、退職の言葉に振り回されないようにしましょう。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

なぜ?退職を繰り返す職員の心理のウラ側
「またか…」とため息をつきたくなる、退職の申し出と撤回。
実は、その行動の裏には、いくつかの共通した心理が隠されていることが多いのです。
例えば、院長や他のスタッフの気を引き、
自分の存在価値を確かめたいという承認欲求の現れ。
あるいは、待遇や人間関係に対する不満を直接口にできない代わりに、
「退職」を交渉のカードとして使っているケース。
本心では辞めたくないけれど、何かを変えてほしいというサインなのかもしれません。
彼ら彼女らも、好きでそんなことをしているわけではない。
その行動の裏にある「本当のメッセージ」を読み解くことこそ、問題解決の第一歩。
感情的に対応するのではなく、まずは冷静に相手の心理を探ってみませんか?
そこに、意外な突破口が隠されているのです。
「口頭でも有効」は本当?退職の意思表示、その常識と落とし穴
さて、院長が一番知りたいであろう核心部分に触れていきましょう。
「退職届がなくとも、口頭での退職の申し出は法的に有効なのか?」答えは、イエスです。
民法上、退職の意思表示は口頭でも成立します。
しかし、ここには大きな落とし穴が潜んでいる!「言った」「言わない」の水掛け論です。
後から「あんなの、本気で言ったわけじゃないです」と主張されたらどうしますか?
録音でもない限り、証明は困難を極めるでしょう。
だからこそ、私たちは「退職届」という書面を重視するのです。
これは、職員を守るためだけのものではありません。
クリニックと院長ご自身を、未来のトラブルから守るための、何より強力な盾です。
口頭での申し出があった際は、必ず書面での提出を冷静に、そして毅然と求める。
この基本姿勢が、何よりも大切です。
まずはこれを徹底!院長が伝えるべき王道のメッセージ
では、具体的にどうすればいいのか。
まずは、どんな場面でも基本となる王道かつ最も安全な対応からお伝えします。
答えはシンプル。「冷静に、そして毅然と、ルールに則って対応する」。
これに尽きます。まず、職員から退職の申し出があったら、
個室で、一対一で話す場を設けましょう。
そして、こう伝えるのです。
「あなたの退職の意思は受け取りました。今後の手続きのために、
退職希望日を明記した退職届を〇月〇日までに提出してください」と。
ポイントは、感情を一切挟まないこと。
そして、「退職の意思」と「具体的な手続き」を切り離して話すことです。
もし相手が撤回を匂わせてきても、
「あなたの意思が決まってから、改めて正式に書類で提出してください」と
ボールを相手に返す。院長からのメッセージは、一貫して
「あなたの人生の決断を尊重しますが、組織としては正式な手続きを踏んでもらいます」
という姿勢を示すこと。これが、相手を無駄に刺激せず、かつ主導権を渡さない賢い対応です。
上級者向け!攻めの対応とその注意点
この王道の手法でも埒が明かない。
そんな時に初めて検討すべき、上級者向けの対応があります。
例えば、「もう、こちらで退職届を用意してしまおうか…」という一手。
やり方次第では極めて有効なカードになり得るのです。
いつまでも退職届を提出しない職員には、クリニック既定の様式を
「あなたの意思を確認するため」という形で提示する。
ただし、絶対に守るべきは「あくまでスタッフ本人の自由意思で署名した」という体裁。
後から「無理やり書かされた」と言われないよう、第三者の同席など
客観的な状況証拠が求められます。
さらに、「次に『辞める』と言った時点で、退職が成立する」という最後通告も、
冷静に、そして証拠を残しながらであれば、交渉のテーブルに乗せることは可能です。
面談内容を録音するなど、相手に覚悟を促す「攻めの一手」。
ただし、これらの方法は諸刃の剣。
実行する際は、感情を排し、あくまで事務的に、冷静に進める覚悟が不可欠です。
弁護士いらず!クリニックの退職トラブルQ&A
最後に、院長が抱えがちな疑問に、Q&A形式でズバッとお答えしましょう。
Q.退職を申し出た職員が、残っている有給休暇の全消化を要求してきました。
A.原則、応じなければなりません。
有給休暇は労働者の権利で、退職時の消化については判例・通説上
使用者に時季変更権の余地はありません。
したがって、請求通りの消化を認める必要があります。
ただし、スムーズな引き継ぎのため、早期から日程調整を促すことが現実的対応です。
Q.「もう明日から来ません」と言われ、引き継ぎを拒否されたら?
A.出勤を強制することはできません。
引き継ぎを全く行わず損害が出た場合、理論上は損害賠償請求も考えられます。
しかし実務上、裁判で損害額や因果関係を立証するのは極めて困難で、
認められる例は稀です。
したがって、損害賠償に期待するよりも、就業規則で引き継ぎ義務を明記し、
退職前から計画的に調整することが現実的防止策です。
Q.退職届のフォーマットは、クリニックで用意すべき?
A.用意しておくことを強くお勧めします。
職員に一から書かせるよりも、必要な項目(退職日、退職理由、署名捺印欄など)が
網羅されたフォーマットを渡す方が、手続きがスムーズに進み、不備も防げます。
あくまで「本人の意思で記入・提出する」という形を徹底してください。
おわりに
ここまでお読みいただき、心から感謝申し上げます。
退職を巡る問題は、院長の心をすり減らす、本当に厄介な問題です。
しかし、正しい知識と対応策を知っていれば、もう何も恐れることはありません。
院長は一人ではないのです。
このコラムが、暗いトンネルを抜け出すための、明るい光となったなら幸いです。
もし、具体的な対応で迷ったり、専門家のサポートが必要だと感じたら、
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(参考)
厚生労働省:仕事を辞めるとき、辞めさせられるとき(PDF)