こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部の親泊です。
毎日のお忙しい診療、本当にお疲れ様です。目の前の患者と向き合う日々の中で、「会計のことまで手が回らないよ…」そう思われるのは当然のこと。税理士の話も、なんだか呪文のように聞こえてしまう…なんてご経験、ありませんか?
でも、ちょっと待ってください! クリニックの将来に備えて、どうしても知っておいていただきたい会計の「お守り」があるんです。それが、今回ご紹介する「引当金(ひきあてきん)」です。 なんだか難しそう?いえいえ、ご安心ください!このコラムを読めば、引当金の全てがスッキリ理解でき、税理士との会話もスムーズに、そして何より、クリニックの将来に備えることができます!どこよりも分かりやすく、面白い会計コラムお伝えいたします!
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

そもそも「引当金」って、一体何者?
「引当金」と聞くと、なんだか専門的で、自分には関係ない…なんて思っていませんか?それは大きな誤解です!引当金は、一言で言えば「未来の特定の支出に備えるための、いわば『未来への貯金箱』」のようなもの。例えば、スタッフの皆さんに支払う夏のボーナスや、勤続年数の長いスタッフが退職する際に支払う退職金。これらは、いつか必ずやってくる大きな出費ですよね?その「いつか」のために、あらかじめ費用として計上し、準備しておくのが引当金の役割なんです。
「え?まだ払ってもいないのにお金を用意しておくの?」そう思われたかもしれません。その通り!これが引当金のミソなんです。もし、ボーナスや退職金を支払うタイミングで慌てて資金繰りに奔走したら…どうでしょう?日々の診療にも影響が出かねませんよね。引当金を設定しておくことで、将来の大きな出費を平準化し、クリニックの財務状況を安定させることができるのです。これは、未来のクリニックを守るための、院長の賢い戦略と言えるでしょう。決して難しい話ではありません。未来のリスクに備える、当たり前だけどとても大切な考え方なのです。

なぜクリニックに「引当金」が必要不可欠なのか?
「未来への貯金箱、なるほどね。でも、本当にうちのクリニックに必要なの?」そう疑問に思われる院長もいらっしゃるかもしれません。答えは、断然「YES」! なぜなら、クリニック特有の、そして確実に来る未来の出費が存在するからです。
先ほども少し触れましたが、スタッフへの賞与(ボーナス)や退職金はその代表格です。優秀なスタッフに長く働いてもらうためには、これらの支払いは避けて通れません。もし引当金を設定せずに、いざ支払いの時期になって「資金が足りない!」なんてことになったら…スタッフのモチベーション低下はもちろん、最悪の場合、離職にもつながりかねません。それはクリニックにとって大きな損失ですよね。
また、医療機器の修繕や買い替えも忘れてはいけません。高額な医療機器は、いつか必ずメンテナンスや更新が必要になります。その時に慌てないためにも、修繕引当金のような形で備えておくことが、安定した医療提供体制を維持するためには非常に重要です。
さらに言えば、引当金をきちんと設定することは、クリニックの経営状況をより正確に把握することにも繋がります。「今は利益が出ているように見えても、将来の大きな出費を考慮すると、実はギリギリだった…」なんて事態を避けることができるのです。引当金は、未来のクリニックを守るだけでなく、現在の経営判断を正しく導くためのツールにもなる、まさに必要不可欠な存在なのです!
クリニックの引当金、具体的にはどんなものがあるの?
「引当金の重要性はわかった!じゃあ、具体的にどんな引当金があるのか教えてよ」という院長の声が聞こえてきそうです。お任せください!クリニックでよく設定される、代表的な引当金をいくつかご紹介しましょう。これを知れば、税理士との会話もグッとスムーズになりますよ!
まずは、最もポピュラーな「賞与引当金(しょうよひきあてきん)」。これは、スタッフの皆さんへ支払うボーナスに備えるための引当金です。毎月の給与と一緒に、少しずつボーナス分を費用として計上していくイメージですね。これで、ボーナス支給月にドカンと大きな出費が発生するのを防げます。
次に、「退職給付引当金(たいしょくきゅうふひきあてきん)」。これは、スタッフが退職する際に支払う退職金に備えるものです。特に、長年クリニックを支えてくれたベテランスタッフが退職する際には、まとまった金額が必要になることがあります。将来の退職金支払いに備えて、計画的に準備しておくことが大切です。
それから、意外と見落としがちなのが「修繕引当金(しゅうぜんひきあてきん)」。高額な医療機器や、クリニックの建物の大規模な修繕は、いつか必ずやってきます。その「Xデー」に備えて、コツコツと積み立てておくのがこの引当金。計画的な修繕は、安定した診療の提供に直結します。
他にも、自費診療の金額が大きいクリニックであれば「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」といって、未収の診療報酬が回収不能になるリスクに備える場合もあります。 これらの引当金は、将来発生する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に設定が認められます。どの引当金を、いくら設定するかは、クリニックの状況によって様々。ぜひ、信頼できる税理士に相談してみてください!

ここが肝心!引当金を設定するときの注意点
「よし、じゃあ早速、あれもこれも引当金にしちゃおう!」そう思われた院長、ちょっと待ってください! 引当金は便利な仕組みですが、いくつか注意すべき点があります。ここを押さえておかないと、せっかくの引当金が「絵に描いた餅」になってしまうかもしれません。
まず、大前提として、引当金は「何でもかんでも設定できるわけではない」ということです。先ほども触れましたが、将来の特定の支出であり、その発生の可能性が高く、かつ金額を合理的に見積もれるという、いわば「引当金の三原則」を満たす必要があります。例えば、「将来、新しい分院を開設したいから、そのための引当金」というのは、残念ながら認められません。
次に重要なのが、「税法上のルール」です。会計上は引当金として計上できても、税金の計算上は費用として認められない(損金不算入)ケースがあります。特に、中小企業のクリニックでは、税法で認められている引当金の種類は限られていることが多いのです。この点を理解しておかないと、「引当金を設定して節税したつもりが、税務調査で否認されてしまった…」なんてことにもなりかねません。ここは税理士の腕の見せ所。必ず専門家のアドバイスを受けましょう。
そして、「見積もりの精度」も大切です。引当金は、あくまで将来の支出の見積もりです。過去の実績や将来の計画に基づいて、できるだけ合理的な金額を見積もることが求められます。過大に見積もっても、過小に見積もっても、経営の実態を正しく反映できません。 引当金は、未来を予測し、計画的に備えるためのツール。しかし、それはルールに則った、適切な運用があってこそ真価を発揮します。難しく考える必要はありませんが、これらの注意点は、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。
院長のギモンを解消!引当金Q&A
さて、ここまで引当金について熱く語ってきましたが、きっと頭の中には、いくつかの「?」が浮かんでいることでしょう。ここでは、よくあるご質問にお答えする形で、引当金への理解をさらに深めていきましょう!
Q1. 引当金って、実際に現金を用意しておくことなの?
A1. いいえ、必ずしもそうではありません。引当金は、あくまで会計上の「費用」として計上するものです。帳簿上で「将来これだけのお金が必要になりますよ」と示しておくイメージですね。もちろん、実際にその支出が発生したときに備えて、資金繰りを考えておくことは非常に重要ですが、引当金の金額と現金の残高が必ずしも一致するわけではありません。
Q2. 引当金を設定すると、節税になるって聞いたけど、本当?
A2. 税法で認められた引当金を計上した場合、その金額が費用(損金)として認められるため、結果的に課税される所得が減り、節税につながることがあります。ただし、先ほど「注意点」でも触れたように、すべての引当金が税法上認められるわけではありません。賞与引当金や退職給付引当金などは、一定の要件を満たせば損金として認められる可能性があります。ここは専門的な判断が必要なので、税理士にご相談ください!
Q3. 会計ソフトを入れていないけど、引当金の管理ってできるの?
A3. はい、ご安心ください!会計ソフトがなくても、引当金の基本的な考え方を理解し、税理士と連携すれば、きちんと管理することは可能です。大切なのは、将来の支出を予測し、その情報を税理士と共有すること。税理士が適切な会計処理を行ってくれます。このコラムで基礎知識を身につければ、税理士とのコミュニケーションもよりスムーズになりますよ!
Q4. 引当金って、一度設定したら変更できないの?
A4. いいえ、そんなことはありません。引当金は、あくまでその時点での最善の見積もりです。状況が変われば、見積もりの金額も変わってきます。例えば、スタッフの人数が増えれば賞与引当金の額も変わるでしょう。引当金は、毎期末に見直しを行い、最新の状況に合わせて適切な金額に修正していくことが大切です。 いかがでしたか?少しは引当金への疑問が解消されたでしょうか。もし、まだ「ここが分からない!」という点があれば、それこそ専門家である税理士の出番です!
おわりに
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!「引当金」という、ちょっぴり難しそうだった会計用語が、少しでも身近なものに感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
引当金は、未来のクリニックを不測の事態から守り、院長が安心して診療に専念するための、力強い味方です。今日、このコラムで得た知識は、まさにその第一歩。ぜひ、この知識を胸に、ご自身のクリニックの未来を思い描いてみてください。そして、「うちのクリニックの場合はどうだろう?」そう思われたなら、今が行動の時です!
会計や税務は、専門家の力を借りるのが一番の近道。私たちペンデル税理士法人は、クリニック経営に精通したプロフェッショナル集団です。引当金の設定はもちろん、クリニック経営に関するあらゆるお悩みに対し、院長の右腕となって、最適な解決策をご提案いたします。
希望に満ちたクリニック経営の実現へ向けて、私たちと一緒に、力強く進みだしましょう!
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