こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部の親泊です。
「院長、今期の法定調書の件ですが…」
税理士との打ち合わせで、こんな言葉を耳にしたことはありませんか? 多くの院長にとって、「法定調書」という言葉は、どこか遠い存在、あるいは「税理士さんがやってくれる、よく分からない書類」かもしれません。日々の診療に追われる中で、税務会計の細かな部分まで把握するのは至難の業。それは重々承知しております。しかし、経営者として、ご自身のクリニックに関わるお金の流れ、特に税務署への報告義務について、最低限の知識を持っておくことは、もはや必須と言えるでしょう。
「でも、今さら聞けないし、難しい話はちょっと…」
そう思われた院長先生、ご安心ください! このコラムは、そんな多忙な院長のためだけに用作成しました。この記事を読み終える頃には、税理士との会話がスムーズになることをお約束しましょう。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

法定調書って、ぶっちゃけ何?~院長が知るべきキホン~
さて、院長。早速ですが、「法定調書」と聞いて、どの様なイメージをお持ちでしょうか? 警察に話を聞かれながら作成する書類?いえいえ、そんなことはありません。その本質はもっとシンプル。一言で言えば、「税務署への“お金の動き”に関する報告書」です。
もう少し具体的にしましょう。国(税務署)は、国民や会社がきちんと税金を納めているか、正確に把握したいと考えています。そのために、「所得税法」や「相続税法」といった法律で、「こういう支払いをした人は、その内容を税務署に報告してくださいね」と定めているのです。この法律で定められた報告書こそが、「法定調書」。
例えば、クリニックがスタッフに給与を支払ったり、外部の業者に報酬を支払ったりしますよね? こうした「誰に、何を理由に、いくら支払ったか」という情報を、決められた様式にまとめて提出する。これが法定調書の役割です。つまり、クリニックが支払ったお金が、受け取った人の所得となり、その人が正しく税金を計算・申告するための、非常に重要な基礎資料となるわけです。
「なるほど、税務署のための書類なんだな」 その通り! でも、それは巡り巡って、クリニック自身の健全な経営にも繋がるのです。なぜなら、法定調書をきちんと作成・提出することは、法令遵守の証であり、税務調査などが入った際にも、胸を張って説明できる体制を築く第一歩となるからです。まずは、「法定調書=税務署への大切な報告書」と、ざっくり覚えておきましょう!

なぜクリニックにも必要?法定調書の提出義務
「うちは小さなクリニックだし、税理士に任せているから関係ないのでは?」
そう思われる院長もいらっしゃるかもしれません。しかし、クリニックの規模に関わらず、法定調書の提出義務は発生します。先ほどお話しした通り、これは法律で定められた義務。避けては通れない道なのです。
では、なぜクリニックに法定調書の提出が必要なのでしょうか? それは、クリニックが日々行っている経済活動の中に、法定調書の対象となる支払いが多く含まれているからです。
最も代表的なものは、スタッフへの給与です。常勤・非常勤を問わず、スタッフに給与を支払えば、「給与所得の源泉徴収票」という法定調書を作成し、条件によっては税務署に提出する必要があります。(もちろん、スタッフ本人にも交付します。)
また、弁護士や税理士、社労士といった専門家への報酬も対象です。特定の専門家へ年間5万円を超える報酬を支払った場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出しなければなりません。さらに、クリニックの家賃を支払っている場合、「不動産の使用料等の支払調書」の提出が必要になることもあります。
これらはほんの一例。他にも、広告宣伝費やデザイン料など、特定の支払いについて法定調書の提出が求められるケースがあります。つまり、クリニックを運営している以上、何らかの法定調書に関わる可能性は非常に高いのです。
「知らなかった」では済まされないのが、税の世界の厳しい現実。税理士任せにするのはもちろん良いのですが、院長自身が「なぜ必要なのか」を理解しておくことで、税理士との連携がよりスムーズになり、経営判断の精度も高まるのです。面倒に思えるかもしれませんが、これはクリニックを守るための大切なステップ。そう捉えてみませんか?

具体例でスッキリ!よく見る法定調書ベスト3
「理屈はわかったけど、具体的にどんな書類なの?」
そうですよね。百聞は一見に如かず。ここでは、クリニックで特によくお目にかかるであろう法定調書ベスト3を、具体例を交えてご紹介しましょう。これで、税理士との会話も、よりイメージしやすくなるはずです!
第1位:給与所得の源泉徴収票
これはもう、院長先生にとってもお馴染みかもしれません。スタッフに支払った1年間の給与・賞与の総額や、源泉徴収した所得税額などを記載する書類です。年末調整の際に作成し、スタッフ全員に交付しますが、税務署へ提出するのは、年間の給与支払額が一定額を超える人(役員なら150万円超、一般従業員なら500万円超など、条件があります)や、年末調整を行わなかった人などが対象となります。これは、スタッフの所得税計算の根拠となる、非常に重要な書類です。
第2位:報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
これは、特定の専門家やフリーランスなどに報酬を支払った場合に作成します。例えば、顧問税理士への報酬、弁護士への相談料、あるいはホームページ作成を依頼したデザイナーへの支払いなどが該当します。ポイントは、「所得税法で定められた特定の業務」に対する報酬であること。そして、同一人物への年間の支払額が5万円を超える場合に、税務署への提出義務が発生します(一部例外あり)。源泉徴収が必要な報酬も多いので、注意が必要です。
第3位:不動産の使用料等の支払調書
クリニックがテナントとして入居している場合、大家さん(法人または不動産業者である個人)に支払う家賃がこれに該当します。もし、同一の相手への年間の支払額が15万円を超えるなら、この支払調書を作成して提出する必要があります。権利金や更新料なども含まれるので、賃貸借契約書を確認してみると良いでしょう。 いかがでしょう? これらの法定調書、見覚えや聞き覚えがあったのではないでしょうか。他にも様々な種類がありますが、まずはこの3つを抑えておけば、バッチリです。

うっかりじゃ済まない!法定調書の注意点
さて、法定調書の基本と具体例が見えてきたところで、次に知っておきたいのが「注意点」です。せっかく理解しても、思わぬ落とし穴にはまってしまっては元も子もありません。ここでは、院長先生が特に気をつけたいポイントを、こっそりお教えしましょう。
注意点1:提出期限は厳守!
法定調書の提出期限は、原則として翌年の1月31日です。これは、給与支払報告書(住民税計算のための書類)と同じタイミングですね。この期限、意外とあっという間にやってきます。年末調整や確定申告の準備と重なり、バタバタしがちな時期。「まだ先だ」と油断していると、気づけば期限切れ…なんてことも。提出が遅れると、ペナルティが科される可能性があります。税理士と連携し、スケジュール管理を徹底しましょう。
注意点2:マイナンバーの記載は必須!
これは非常に重要です。給与所得の源泉徴収票や報酬の支払調書など、多くの法定調書には、支払いを受ける人(スタッフや報酬の相手先)のマイナンバー(個人番号)、あるいは法人の場合は法人番号を記載する必要があります。マイナンバーは、税務署が個人の所得を正確に把握するためのキーとなる情報。記載漏れや間違いがないよう、厳重に管理・確認する必要があります。スタッフからの収集や、外部への支払先からの取得には、細心の注意を払いましょう。
注意点3:「提出不要」でも「作成義務」はある!
第3章で、「税務署へ提出するのは一定額を超える場合」とお話ししました。では、提出基準に満たない場合は何もしなくて良いのでしょうか? 答えは「NO」です。例えば、給与所得の源泉徴収票は、税務署への提出対象外であっても、スタッフ本人には必ず交付する義務があります。また、税務調査などで提出を求められる可能性もあるため、作成・保管は必須です。この点を勘違いしないようにしましょう。
注意点4:源泉徴収との連携を忘れずに!
法定調書に記載する金額、特に報酬などは、源泉徴収と密接に関わっています。報酬を支払う際に、あらかじめ所得税を天引き(源泉徴収)し、それを国に納める義務があります。法定調書には、この源泉徴収した税額も記載します。源泉徴収漏れや計算ミスは、後々大きな問題になりかねません。支払い時に源泉徴収が必要かどうか、税率は何%か、を都度確認する習慣をつけたいところです。
これらの注意点、いかがでしたか? 「ちょっと面倒だな…」と感じたかもしれません。でも、事前に知っておくだけで、リスクは大幅に減らせます。転ばぬ先の杖として、ぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。

院長の疑問を解消!法定調書Q&A
ここまで読み進めてくださった院長、法定調書への理解がかなり深まったのではないでしょうか。最後に、院長先生が抱きがちな疑問について、Q&A形式でスッキリ解消していきましょう!
Q1. パートやアルバイトのスタッフにも、法定調書は関係ありますか?
A1. はい、大いに関係あります! パートやアルバイトの方であっても、給与を支払っている以上、「給与所得の源泉徴収票」は作成・交付する必要があります。年間の給与支払額が103万円を超えるなど、一定の条件を満たせば源泉徴収も必要になりますし、税務署への提出基準(一般的には年間500万円超)に該当すれば、提出も必要です。雇用形態に関わらず、給与を支払うすべての方が対象と心得ましょう。
Q2. 提出し忘れたら、どうなりますか?
A2. まずは「正直に、速やかに提出する」ことが大切です。故意に提出しなかったり、虚偽の記載をしたりすると、所得税法上の罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科される可能性があります。また、無申告加算税や不納付加算税、延滞税といった追徴課税が発生することも。税務署から指摘される前に、気づいた時点で自主的に提出・修正することが、傷口を広げないための最善策です。
Q3. 法定調書の種類が多すぎて、どれを作ればいいか分かりません…
A3. その気持ち、よく分かります! 法定調書は現在60種類ほどあり、すべてを把握するのは困難です。だからこそ、税理士という専門家の存在が重要になります。院長は、「どんな支払いが法定調書の対象になり得るのか」という “勘所”を押さえておけば十分です。例えば、「人に給料を払った」「専門家に報酬を払った」「家賃を払った」「高額なものを買った・借りた」といった際に、「これは法定調書に関係するかも?」とアンテナを張れるようになることが目標です。迷ったら、迷わず税理士に相談しましょう!
Q4. 会計ソフトを使わずに、法定調書を作成・提出するのは大変ですか?
A4. 会計ソフトを使えば確かに効率的ですが、必須ではありません。国税庁のホームページからは、手書き用の様式や、パソコンで入力して印刷できるPDF様式がダウンロードできます。また、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用すれば、オンラインでの作成・提出も可能です。大切なのは、支払いの記録をきちんと整理・保管しておくこと。日々の記録さえしっかりしていれば、ソフトがなくても対応は可能です。もちろん、税理士に作成から提出までを依頼するのが、院長にとっては最も負担の少ない方法かもしれませんね。
法定調書に関する疑問は、少し解消されたでしょうか? ここで挙げた以外にも、個別のケースで様々な疑問が出てくるかと思います。そんな時は、一人で抱え込まず、専門家を頼ることを忘れないでください。
おわりに
最後までこの長いコラムにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。法定調書という、ともすれば敬遠されがちなテーマでしたが、少しでも身近に感じていただけたなら、これに勝る喜びはありません。
この記事を通して、法定調書が単なる面倒な義務ではなく、クリニックの透明性を高め、税務上のリスクを回避し、ひいては健全な経営を守るための重要なツールであることをご理解いただけたのではないでしょうか。もう、税理士との会話で「法定調書」という言葉が出てきても、戸惑うことはありません。自信を持って、経営者としての視点から話ができるはずです。
とはいえ、「基本はわかったけど、うちのクリニックの場合はどうなんだろう?」「やっぱり専門家に一度相談してみたい…」そう思われるのは当然のことです。そんな時は、どうぞお気軽に、私たちペンデル税理士法人にご相談ください。
ペンデル税理士法人は、これまで数多くのクリニック経営をサポートしてきた実績と経験があります。法定調書はもちろん、クリニック特有の税務・会計に関するあらゆるお悩みに、親身に、そして的確にお応えします。院長の良きパートナーとして、共に歩んでいけることを心より願っております。
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