こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
2025年6月に成立した年金制度関連の法改正により、パート・アルバイトなど
短時間労働者の厚生年金・健康保険の適用が、今後さらに拡大されることが決定しました。
多くのクリニックや医療法人にとって、スタッフの社会保険加入は人件費に大きく影響します。
本改正のポイントを正確に理解し、今から準備を進めることが重要です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

社会保険の適用拡大 3つのポイント
今回の改正における主な変更点は以下の3つです。
1. 企業規模要件の段階的な縮小・撤廃
現在、社会保険の加入対象となるのは「従業員数51人以上」の事業所ですが、
この規模要件が段階的に引き下げられ、最終的には撤廃されます。
- 現状: 従業員51人以上(2024年10月に縮小)
- 2027年10月~: 段階的に縮小開始
- 2035年10月~: 完全撤廃(企業の規模に関わらず要件を満たせば加入)
2. 賃金要件の撤廃
いわゆる『106万円の壁』(月額8.8万円以上かつ週20時間以上勤務)の基準となっていた
賃金要件が撤廃されます。
なお、扶養控除に関する『130万円の壁(税制・国保基準)』とは異なる点に
ご注意ください。
- 撤廃時期: 改正法の公布から3年以内の政令で定める日(全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断される見込み)
これにより、今後は週の所定労働時間が20時間以上であれば、
賃金額にかかわらず社会保険の加入対象となります。
3. 個人事業所の適用対象業種の拡大
従来、個人事業所は商業・サービス業など一部の業種(いわゆる法定17業種)に
限定されていましたが、これが全業種に拡大されます
- 対象: 常時5人以上の従業員を使用する全業種の個人事業所
- 施行日: 2029年10月(ただし、施行日時点で既に存在する事業所については
猶予措置が設けられる予定です)
医療機関への影響と支援策
この改正により、これまで対象外だった小規模なクリニックや多くのパートスタッフが
社会保険の加入対象となります。
法人負担の保険料が増加するため、資金計画の見直しが必須です。
一方で、急激な負担増を緩和するための支援策も予定されています。
- 保険料負担の軽減措置: 新たに加入対象となる標準報酬月額12.6万円以下(予定)の短時間労働者については、3年間の時限的な保険料軽減措置が検討されています。
- 助成金の活用: 正社員化や労働時間の延長、賃金アップに取り組む事業主に対しては、キャリアアップ助成金などの活用も考えられます。
まとめ
社会保険の適用拡大は、スタッフにとっては手厚い保障につながる一方、
医療機関にとっては人件費負担の増加が見込まれるため、
経営への影響を見据えた準備が必要です。
計画的な対応が求められるため、
自院への影響額の試算や、今後の採用・雇用契約の見直しについて、
お早めにペンデルグループへご相談ください。
【参考】
年金制度改正法