こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部です。
「また急な有給申請か…」。
スタッフから直前の有給休暇の申請があり、頭を抱えていませんか?
特に、いつもルールを守らない特定のスタッフからの申請は、頭痛の種になるだけでなく、
他の真面目なスタッフのモチベーション低下にもつながりかねません。
「忙しいから断りたいけど、法的に問題ないだろうか?」。
多くの院長が抱えるこの悩み。
安心してください。このコラムでは、有給休暇の直前申請にどう対応すべきか、
法的根拠と現実的な対応策を分かりやすくお伝えします。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

なぜ直前申請が繰り返されるのか?
「有給は〇日前までに申請」というルールがあるにもかかわらず、
いつも直前に申請してくるスタッフに、どう対応すればいいのでしょうか。
感情的に「困る」と伝えても、根本的な解決にはなりません。
まず大切なのは、なぜそのスタッフが直前申請をするのか、その背景を
冷静に考えることです。
単にルーズなだけかもしれませんし、「どうせ休めないだろう」と
諦めているのかもしれません。
または、院長が忙しすぎて、直前でなければ言い出しにくいと感じている可能性もあります。
まずは、申請期限を設定している「理由」を明確に伝える
直前申請を繰り返すスタッフに対し、最初に行うべきは、クリニックのルールと
その理由を明確に伝えることです。
単に「ルールだから」と伝えるだけでは不満が残ります。
「〇日前までに申請してもらうのは、限られた人数で患者さんに最善の医療を提供するため、
人員配置を調整する時間が必要だから」といった、具体的な理由を丁寧に説明しましょう。
この際、口頭での注意だけでなく、記録に残すことが重要です。
いつ、誰に、どのような内容を伝えたかを記録しておけば、
今後の対応を検討する際の重要な証拠となります。
それでも改善しない場合の対応策
何度注意しても直前申請が続く場合、より具体的な対応を検討する必要があります。
1.有給休暇の時期変更権の行使
クリニックのように少人数で運営している場合、スタッフ1人の欠勤が
事業の正常な運営に大きな影響を与えることがあります。
このような場合、クリニック側には「時期変更権」が認められています。
例えば、「その日に休まれると、受付業務が回らない」など、
具体的な業務上の支障を理由に、申請日を変更してもらうよう求めることができます。
ただし、「時期変更権」の行使は、裁判例でも非常に厳しく判断されます。
単に「忙しい」では通じません。10月以降、予防接種などで患者数が増える時期において、
「特定のスキルを持つスタッフが欠けることで、安全な医療提供が物理的に不可能になる根拠
(シフト表の調整履歴など)」を提示できる準備が必要です。
2.事後申請の取り扱い
インフルエンザなど、やむを得ない理由での欠勤は、事後的に有給休暇として
振り替えるケースも多いでしょう。
しかし、直前申請を繰り返すスタッフに対しては、
就業規則の「事後申請を許可することがある」という規定を活用し、
事後申請を認めないという毅然とした対応を行った事例があります。
これにより、月給制のスタッフの場合は「欠勤控除」となり、給与に影響が出ることで、
ルールの重要性を理解してもらうきっかけになります。
評価と制度の整備による根本解決
この問題を根本から解決するためには、場当たり的な注意ではなく、
経営の仕組みとして「ルールを守る者が報われる」体制を構築しなければなりません。
2025年現在、労働環境の適正化は経営者の義務であり、放置はリスクです。
1. 人事評価制度への厳格な反映
ルールの順守やチームへの協調性は、単なるマナーではなく「業務遂行能力」の一部です。
これらを賞与や昇給の評価項目に明文化してください。
「権利(有給)は主張するが、義務(申請期限)を怠る」スタッフに対し、
感情的に怒るのではなく、「評価(=給与)を下げる」という客観的な経営判断で
対応します。
これにより、ルールを守る真面目なスタッフの不公平感を解消し、離職リスクを抑止します。
2. 年5日取得義務との戦略的整合
直前申請を繰り返すスタッフへの対応で注意すべき盲点は、
「年5日の有給休暇取得義務」です。
感情に任せて申請を却下し続けた結果、期限内に5日を消化させられなければ、
院長が法違反に問われます。
「直前申請は認めないが、代わりに業務に支障がない別の日を指定する」といった、
時期変更権と取得義務をセットで管理する戦略的な運用が不可欠です。
3. IT活用による「証拠」の自動生成
口頭でのやり取りや紙の申請書は、「言った」「言わない」の泥沼を招くだけです。
- デジタル申請の導入
クラウド勤怠管理システムや共有フォルダを活用し、申請日時をシステム上に
記録してください。 - 「理由」のデータ化
「なぜその日はダメなのか」の根拠(予約数やシフト状況)をデータで残すことで、
万が一の労使紛争の際、院長の判断が正当であったことを証明する
強力な武器になります。
おわりに
有給休暇の直前申請は、単なるルール違反ではなく、クリニック全体の運営に関わる
重要な問題です。
就業規則を整備し、ルールとその理由を明確に伝え、記録に基づいた毅然とした対応を
することで、スタッフとの信頼関係を損なうことなく、
健全なクリニック経営を目指しましょう。
もし、具体的な対応で迷ったり、専門家のサポートが必要だと感じたら、
いつでもペンデルグループにご相談ください。
ペンデル税理士法人医業経営支援部では、ペンデル社会保険労務士法人と連携し、
人事相談に対応するほか、医療機関の会計・税務・経営相談の他、
開業・承継・医療法人申請・レセプトチェック指導に特化したサービスを提供しております。
お困りのことがございましたら、どうぞ、問い合わせフォームより、
お気軽にご連絡ください。
(参考)
厚生労働省:年次有給休暇の取得促進について
厚生労働省:年次有給休暇の時季指定義務(リーフレット)