こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
スタッフの給与を引き上げた際に、
増加額の一部を法人税から直接差し引くことができる「賃上げ促進税制」。
この制度は、従業員の給与引上げを支援するための政策的優遇措置であり、
法人税の税額控除が受けられる制度ですが、
「その年の法人税額が少なくて、計算された控除額を全額使いきれなかった」という
ケースも少なくありません。
しかし、ご安心ください。
令和6年度税制改正により、中小企業向けの賃上げ促進税制では、
使いきれなかった控除額(「繰越控除限度超過額」)を
翌年度以降最長5年間繰り越すことが可能になりました。
これは他の税額控除制度と比べても最も長い期間です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
繰越控除を適用するための重要要件
ただし、この繰越控除を適用するには一つ重要な条件があります。
それは、繰越控除を適用する各年度でも、
前年度と比べて給与支給額が増加していることが条件です。
単年度のみの賃上げでは適用できず、継続的な給与引上げの取組みが必要です。
つまり、一度きりの賃上げだけでなく、継続的に従業員の待遇改善に取り組む姿勢が、
税制優遇を受けるための鍵となります。
複数の税額控除を適用する場合の注意点
クリニックの設備投資などにより、
賃上げ促進税制以外にも税額控除を適用するケースがあります。
賃上げ促進税制を含む複数の税額控除を併用する場合、
控除できる合計額は「調整前法人税額の90%」が上限です。
これは中小企業向けの特例で、通常の20%上限よりも優遇されています。
この上限によって使いきれなかった控除額も、繰越控除の対象となります。
その際、どの制度の控除額を繰り越すかは、
繰越期間が長いものから優先的に配分されるルールになっています。
繰越控除の適用で忘れてはならない手続き
この有利な繰越控除の適用を受けるためには、手続きを忘れないことが極めて重要です。
- 超過額が生じた年度
確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付する。
- 繰り越している期間中
控除を使わない年度であっても、
毎年、確定申告書に上記の明細書を添付し続ける必要がある。
- 繰越控除を適用する年度
確定申告書に、控除を受ける金額などを記載し、計算明細書を添付する。
「繰越控除限度超過額に関する明細書」を
毎年度の確定申告書に添付し続ける必要があります。
一度でも添付を漏らすと、
その年度以降の繰越控除が認められない場合があるため注意が必要です。
まとめ
賃上げ促進税制の5年間の繰越控除は、利益の変動が大きい場合でも、
賃上げの努力が無駄にならないように配慮された非常に有利な制度です。
利益が少ない年でも、翌年度以降に控除を繰り越せるため、
安定した節税効果が期待できます。
要件を満たし続けることや、毎年の明細書添付を忘れないことが重要ですので、
最大限活用するために、ぜひ専門家にご相談ください。
ペンデル税理士法人は、税務顧問を通じ、顧問先の皆さまの経営を長期的に支援しています。