こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部です。
近年、医療機関において患者様やご家族からの理不尽な要求や暴言、いわゆる「ペイシェントハラスメント(カスハラ)」が深刻な問題となっています。スタッフの離職や医院の機能不全を防ぐため、2025年6月に成立した改正労働施策総合推進法により、事業主に対するカスタマーハラスメント防止措置が義務化されることとなりました。2026年中の施行が予定されており、本格施行に備え、院内体制の整備を計画的に進めていくことが重要です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

■ 医療現場特有の「判断の難しさ」と応招義務
一般企業と異なり、医療現場での対応を難しくしているのが、医師法に基づく「応招義務」の存在です。病気や痛みへの不安から患者様が一時的に感情的になるケースもあり、正当なクレームと悪質なハラスメントの線引きは非常に困難です。 しかし、医師には応招義務があるものの、暴力行為や診療の妨害など、正当な診療の提供が困難な場合には診療を断ることが認められるケースもあります。法改正においては、「社会通念上許容される範囲を超えた要求や言動によって、職員の就業環境が害される場合」をカスハラと捉え、組織として毅然と対応する枠組みが求められています。
■ 医療機関が今から準備すべき3つの対策
施行に向け、スタッフを守るために以下の3ステップで準備を進めましょう。
- 基本方針の策定と周知
「当院はカスハラを許容しない」という姿勢を明確にし、院内掲示やホームページで発信することで抑止効果を高めます。
- 対応マニュアルの作成と共有
一人で抱え込まず複数名で対応する体制や、必要に応じて録音・録画等による証拠保全を行う手順を定めます。特に、応招義務との関係を踏まえた対応判断(診療をお断りできるケースに該当するかどうか)については、デリケートなため専門家を交えた事前のルール化が不可欠です。
- 相談窓口の設置
ハラスメントを受けたスタッフが安心して相談できる窓口を整え、担当者が適切にヒアリングできるよう教育を実施します。
■ 安全配慮義務違反のリスクを回避する
悪質なハラスメントが発生しているにもかかわらず、医院側が「患者様だから」と放置し、スタッフがメンタル不調に陥った場合、適切な対応を怠ったとして安全配慮義務違反が問題となる可能性があります。人手不足が続く医療業界において、誰もが安心して働ける環境を整えることは、採用力強化や定着率向上における最大の投資といえます。
おわりに
ペイシェントハラスメント対策は、単に就業規則やマニュアルを形骸化させるのではなく、現場スタッフへの周知と「いざという時の判断基準の共有」が要となります。ペンデル社会保険労務士法人では、顧問先様へ、医療現場の実情に特化したハラスメント対策規程の策定や、応招義務を考慮した対応マニュアルの整備、スタッフ向け研修などを全面的にサポートいたします。院長先生と大切なスタッフを守る強い組織づくりのために、まずはペンデルグループまでお気軽にご相談ください。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
【参考】
厚生労働省:『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』
厚生労働:職場におけるハラスメント対策(PDF)