こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
院長は、診療だけでなく、スタッフのマネジメント、資金繰り、設備投資、将来の事業承継など、さまざまな判断を求められます。
その一方で、院長ご自身やご家族の将来に必要な資金について、十分に検討する時間を確保できていないケースもあります。
たとえば、次のような悩みです。
- 将来の生活資金や教育資金を準備したい
- クリニックの資金と個人資産を適切に分けたい
- 事業承継や相続について早めに考えたい
- 利益が見込まれる場合の資金の活用方法を検討したい
- 万一の病気や就業不能に備えたい
こうした課題を考える際、保険は選択肢の一つとなる場合があります。ただし、保険への加入を節税だけで判断するのではなく、保障内容、資金計画、会計・税務上の取扱いを総合的に確認することが大切です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
院長が早めに考えておきたい資金計画
まずは、クリニックと院長個人の資金を分けて整理しましょう。
クリニックでは、運転資金、設備投資、採用・人材育成、退職金、事業承継など、将来まとまった資金が必要になる可能性があります。
一方、個人では、生活資金、教育資金、住宅資金、老後資金、相続への備えなどを考える必要があります。
法人と個人で必要な資金を整理しないまま保険や金融商品を契約すると、必要な時期に資金を使えなかったり、解約によって損失が生じたりする可能性があります。
まずは、次の事項を確認しましょう。
- いつ、どの程度の資金が必要になるか
- クリニックと個人のどちらで準備するか
- 手元資金をどの程度確保するか
- 中途解約や換金が必要になる可能性はあるか
- 事業承継や相続をどのように考えているか
保険を活用する場合の確認ポイント
保険を検討する場合は、税務上の効果よりも、まず保障の必要性を確認します。
確認したい主な項目は次のとおりです。
- 保障の対象となるリスク
- 保障期間
- 保険金や給付金の支払条件
- 保険料の総額
- 保険料の支払期間
- 解約返戻金の有無と金額
- 中途解約時の損失
- 法人と個人のどちらが契約者・受取人になるか
- 会計・税務上の処理
- 契約内容を変更した場合の取扱い
保険料の会計・税務上の処理は、保険の種類、契約内容、契約時期、契約者や受取人などによって異なります。
そのため、「保険料の一部を損金にできる」「将来の資産形成になる」といった説明だけで判断せず、保障と費用のバランスを確認することが重要です。
法人契約の保険を個人へ移転する場合の注意点
法人が契約している保険を、将来、院長個人へ移転する方法が検討されることもあります。
ただし、法人から個人へ保険契約を移転する場合は、移転時点の保険契約の評価額、法人側の帳簿価額、解約返戻金、契約内容などを踏まえて、税務上の取扱いを確認する必要があります。
特に、低解約返戻金型保険などは、移転時の評価方法について注意が必要です。解約返戻金が低い時期であれば、必ず低い価額で移転できるとは限りません。
また、移転後に解約した場合も、解約返戻金や移転時の評価額、法人と個人それぞれの課税関係を確認する必要があります。
法人から個人への移転や名義変更を検討する場合は、契約前に税理士や保険会社などへ相談し、想定される税務・資金負担を確認しましょう。
利益が見込まれる場合に確認したいこと
利益が見込まれる年には、保険加入を含めた決算対策を検討することがあります。
しかし、利益を減らすことだけを目的に新たな契約を結ぶと、将来の資金繰りを圧迫する可能性があります。
検討にあたっては、次のような選択肢を比較しましょう。
- 必要な医療機器や設備への投資
- スタッフの採用・教育
- 院内環境の整備
- 借入金の返済
- 退職金や事業承継の準備
- 手元資金の確保
- 必要な保障を備える保険の検討
決算対策は、税額だけでなく、クリニックの将来計画や資金繰りを踏まえて考えることが大切です。
保険以外の選択肢も含めて検討する
資産形成や将来への備えは、保険だけで行う必要はありません。
預貯金、投資商品、退職金準備、設備投資、借入金の返済、事業承継対策など、複数の方法があります。
金融商品や海外資産を検討する場合は、価格変動、為替、流動性、税務、規制などのリスクを確認しましょう。
大切なのは、特定の商品を選ぶことではなく、院長ご自身とクリニックの目的に合った方法を選ぶことです。
まとめ
クリニックの経営と院長個人の資産管理を考える際は、次の点を意識しましょう。
- 法人と個人の必要資金を分けて整理する
- 保険は節税ではなく保障の必要性から検討する
- 保険料、解約返戻金、契約期間を確認する
- 法人から個人への移転には税務上の確認が必要
- 利益が出た場合も、資金繰りを優先して判断する
- 保険以外の方法も含めて比較する
本コラムは、特定の保険商品の加入や名義変更を推奨するものではありません。保険の会計・税務上の取扱いや契約上の評価は、契約内容や契約時期などによって異なります。具体的な検討にあたっては、契約前に専門家へご相談ください。
ペンデル税理士法人 医業経営支援部では、医療機関の会計・税務・経営相談をはじめ、開業支援、事業承継、医療法人の設立・運営支援などについてご相談を承っています。
クリニックの将来資金、事業承継、法人と個人の資産管理についてお悩みの方は、お問い合わせフォームよりご相談ください。

(参考)
国税庁:保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説(PDF)
金融庁:節税を主たる目的として販売される保険商品への対応
国税庁:事業承継税制特集