こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
医療機関の運営を支えるために設立したMS法人を、役割を終えて整理する――そんな場面で必要になるのが「解散・清算」の手続です。
MS法人(メディカルサービス法人)は、医療機関の不動産管理や医療材料の仕入れ、人材・経理などの周辺業務を担う株式会社等として設立されることが多い存在です。本記事では、このMS法人を解散・清算する際の計算書類を、医院長・事務長の視点でやさしく整理します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
なぜ今、MS法人の整理が話題になるのか
事業承継やグループ再編、節税メリットの見直しなどを背景に、「使わなくなったMS法人をどう畳むか」を検討するケースが増えています。株式会社であるMS法人の解散・清算は、通常の決算とは作成書類が変わる点に注意が必要です。
そもそも「解散・清算」とは
会社は「解散」すると営業活動を停止し、財産を現金化して債務を弁済する「清算」に入り、最終的に法人格が消滅します。この期間は、事業を続ける前提(継続企業)の通常決算とは作成書類が変わります。
解散したときの「事業年度」はどう区切る?
MS法人(株式会社)が解散した場合、「事業年度開始の日~解散の日」までを1つの事業年度(解散事業年度)とします。その後、清算が終わるまで、解散の日から1年ごとに決算を行います(清算事務年度)。
【補足】持分会社(合同会社など)の形態をとるMS法人の場合は、解散後も定款に定めた事業年度のままとなる点が株式会社と異なります。
解散後に作る計算書類
解散後は、財産状況を確定させるため次を作成します。
- 解散日現在の財産目録
- 解散日現在の貸借対照表
これらは清算価額(処分価額)ベースで作成し、株主総会(または清算人会)の承認を受ける書類となります。
重要: ここで「税務」と「会社法」で基準が異なります。法人税の申告は解散事業年度以後も「損益法」で計算するため、実務では次の二段構えが通例です。
- ①通常事業年度ベースの貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳書を「申告用(税務)」として作成
- ②それを清算価額ベースに組み替えた「総会承認用(会社法)」を作成
清算価額ベースへの「組み替え」が実務の肝
解散後は通常の配当ができないため、純資産の部は剰余金の内訳を示さず「純資産の部」1本で表示してよいと解されています。また、財産の換価処分の過程にあることから、資産・負債の流動/固定の区分表示も不要とされています。
清算中に作る計算書類
清算事務年度中は、次の書類が必要です。
- 貸借対照表(清算価額ベース)
- 事務報告書(=事業報告書ではない点に注意)
- 附属明細書(重要なものがある場合)
営業活動の報告ではなく、その年度の清算事務の状況・損益・今後の見通しを記載するため「事務報告書」となります。ここでも申告用として損益計算書等を作成し、申告書に添付する実務が行われます。
重要ポイントのまとめ
- 解散事業年度と清算事務年度で区切りが変わる
- 「申告用(税務)」と「総会承認用(会社法)」の二本立てが基本
- 清算中の報告は「事務報告書」
MS法人の整理は、医療機関本体との取引関係(不動産賃貸・業務委託など)の清算も絡むため、個別の判断は専門家にご確認ください。

(参考)
会社法492条・494条(財産目録等・清算事務年度の計算書類)
法人税法施行規則第35条(確定申告書の添付書類)