こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
2026年9月9日、医業関係業者様向けに「令和8年、クリニック開業はいくら必要か?資金計画から考える開業支援と業者間連携」と題したセミナーを開催いたしました。本コラムでは、セミナーでお伝えした中心テーマである「開業資金の変化」と、それを踏まえた「資金計画と開業支援の連携」についてお伝えします。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

比較モデルで見る総必要資金の変化
セミナーでは、東京都23区内の内科クリニック(40坪、院長1名、スタッフ5名(常時3名の勤務を想定))を想定し、自己資金ゼロ・全額借入(設備15年・運転10年、元本据置各1年)という一定条件の下で、令和6年モデルと、2026年6月時点の条件を設定した令和8年モデルを比較しました(※全額借入を推奨する趣旨ではありません)。患者数の推移と平均診療単価5,500円は両モデルで共通としています。
今回の比較モデルでは、開業後に備える運転資金を含む総必要資金が約8,448万円から約1億89万円へと、約19.4%増加する結果となりました。
開業時の必要資金と、開業後の負担はどう変わるか
総必要資金の増加には、内装・機器等の初期支出の増加と、開業後の支払いに備える運転資金の増加が含まれます。
初期支出としては、本モデルでは内装工事費を坪65万円から95万円に変更して試算した結果、約1,200万円の増加となりました。機器・備品についても、令和6年モデルより約241万円高く設定しています。 継続負担としては、募集・採用時点の最低賃金や採用条件の変化を踏まえ、本モデルでは月額人件費を約9.8%高く設定しました。さらに、金利上昇と借入額の増加により、最初の5年間の利息負担が約290万円増加しています。
家賃の上昇も含め、これらは毎月の資金繰りに影響し、結果として必要な運転資金の増加にもつながります。
ドクター向け:投資の優先順位と運転資金
こうしたコスト上昇により、本モデルの試算では初年度の税引前損益が約327万円悪化し、5年目末の資金残高も約950万円減少しました。同じ患者数の推移でも資金の余裕が小さくなるため、開業後の月次資金残高を確認し、最も資金が少なくなる時期と金額を把握する必要があります。患者数が計画を下回る場合には、月々の資金収支がどの程度悪化し、手元資金がいつ、いくらまで減少するかも確認しておくことが重要です。
保険請求分は、通常、診療月の翌々月に入金されます。この入金時差に加え、本モデルでは、1年間の元本据置期間が終了すると、元本返済も始まります。そのため、以下の点が重要になります。
- 投資の優先順位の整理
診療方針に合わせて、投資の優先順位を整理します。仕様や導入時期の見直しにより、資金不足の回避・軽減を図ります。延期した設備費も将来の資金計画に残します。
- 制度要件に沿った計画
外来・在宅ベースアップ評価料について、開業準備の段階から算定要件と届出時期を確認し、制度による収入と、対象職員の賃金改善に必要な支出をセットで計画することが重要です。
- 運転資金の確保
開業前から認知を高めるとともに、患者数の立ち上がりが遅れた場合も想定して運転資金を確保します。
開業支援業者向け:総額・支払時期・変更情報の共有
過去の支援経験を生かしながら、現在の見積り・採用条件・融資条件で再検証することが重要です。例えば、機器を比較する際には、購入時に必要な資金に加え、5年間など一定期間の保守費・消耗品費を含む支払総額を示すことで、ドクターが導入時の支払負担と開業後の維持費を踏まえて判断しやすくなります。また、追加工事や納期変更が生じたら、差額・支払時期・判断期限を全体窓口へ共有することが大切です。
提案内容の変更が総予算に与える影響や、支払時期と融資実行日の調整など、ドクターの了承のもと、全体窓口を通じて必要な関係者に情報を共有し、チームで開業をサポートすることが求められます。
ご相談について
ペンデル税理士法人 医業経営支援部では、開業後の資金不足リスクを見据えた事業計画の作成や、以下のような具体的なご相談を承っております。必要に応じてグループの社会保険労務士法人とも連携し、雇用・賃金面の準備を支援します。
- ドクターの皆様
見積額が予算内に収まるか、自己資金と借入の組み合わせ、開業後に必要な運転資金について。
- 開業支援に携わる企業の皆様
支援中の案件の資金計画、見積変更による予算への影響、支払時期の調整、案件に関する連携相談、共同勉強会の開催について。
診療科・開業希望時期・物件の検討状況・お手元の見積りなどを、分かる範囲でお知らせください。具体的な開業計画や、支援中の案件についてぜひご相談ください。

(参考)
東京労働局:最低賃金の引上げ
厚生労働省:地域別最低賃金全国一覧