こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部 親泊です。
今回は、クリニック承継でよく言われる『承継は短期間で開業できる!』が
本当にその通りかどうかについてお話ししたいと思います。
クリニック承継をお考えの売り手の先生、買い手の先生ともに
承継の時期は承継決定に大きくかかわってきますので
承継をお考えはじめられたタイミングで一度検討していただければ幸いです。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

「一般的なクリニック」とは、どのようなクリニックか
「一般的なクリニック」とは、どのような医療機関を指すのでしょうか。
厚生労働省の調査によると
クリニックの開設主体は、医療法人が約45%、個人による開設が約38%**を占めています。
(残りは、国や公的医療機関、大学など)
また、病床の有無という観点から見ると
約6%のクリニックが病床を有していますが、その数は年々減少傾向にあります。
診療科目別に見ると、内科が全体の約62.5%と最も多く、次いで小児科、皮膚科と続きます。
このことから
医療法人による無床のクリニック、特に内科クリニックが数多く存在することがわかります。
一方、診療所数が比較的少ない科目として、産科、脳神経外科、婦人科、泌尿器科などが
挙げられます。
これらの科目は、専門医の数、専門性の高さや設備投資の規模といった要因が
診療所数の少なさに繋がっていると考えられます。
クリニック事業承継で、省略(簡略化)できる工程について
クリニック開業における準備は、物件選定、内装工事、医療機器の導入
スタッフの採用・研修、そして患者さんへの告知など、多岐にわたります。
これらの工程は、先生の診療理念や方針を具現化する上で非常に重要です。
開業準備は綿密な計画と実行が必要ですが、すでに診療を行っているクリニックであれば
理念や方針との比較検討を行い、特に改善したい点に焦点を当てることで
開業までの期間を短縮できる可能性が高いです。
例えば、より患者さんに快適な空間を提供するために追加設備を検討したり
新しい医療機器と入替えしたりといった、診療の質向上に直結する部分に注力することで
短期間で効率的な開業を実現できるでしょう。
クリニック種類別の必要な行政手続きについて
行政手続きに関しても、ケースによって手続きの簡素化が期待できる場合があります。
医療法人の診療所を承継する場合、医療法人という法人が診療所の許認可を取得しているため、
理事長(管理医師)の交代手続きのみで、診療所の運営を引き継ぐことが可能です。
一方、個人クリニックの場合、診療所の許認可を院長個人が取得しているため
院長交代の際には、現院長の廃業届と新院長の開業届が必要となります。
ただし、既存の施設を利用する場合、保健所による図面確認や指導が
すでに診療を行っているクリニックという前提で行われることが多く
保健所が考える簡易な指摘事項は、黙認してもらえる可能性があります。
(ただし、あまりに診療所としてふさわしくない構造設備の場合は
修正工事を行わないと、開設届が受理されない場合もあります)
一方、時間調整が必要な項目も
承継のタイミングは、買い手または売り手の一方的な希望で決定できるものではありません。
売り手が「〇歳で引退したい」という明確な希望をお持ちであれば
承継は早ければその時期から開始されることになるでしょう。
一方で、買い手が現在の勤務先を退職までに半年から1年の期間を要する場合にも
承継時期の短縮は困難です。
双方にとって最適な時期を見つけるため、互いの希望や状況を十分に考慮し
円満な合意に至るよう努めることが重要です。
2か月で承継完了した事例
A先生は、定年退職後も現職の病院で働き続けたいと願っていましたが
病院との折り合いがつかず、残念ながら退職を決意しました。
残り3ヶ月の日々、次の職場を探さなければと焦る日々を送っていました。
そんな中、偶然、閉院を検討している個人診療所の情報をお聞きになり
藁をもすがる思いで相談に伺いました。
診療所側は、諸事情により2ヶ月後の閉院を予定しており
後継者を探していたところだったのです。
お互いの事情が合致し、診療所の引き継ぎが決まりました。
診療所の内装解体費用も不要となり、先生も職員も一安心。まさに、渡りに船といった事例でした。
引継ぎまで、2年掛けた事例
B先生は、卒業後、将来的な開業を目指し、複数の診療所で勤務経験を積んでいました。
その中で、ある住宅街の医療法人クリニックで勤務していた時に、法人の引き継ぎを打診されました。
先生は、その地域の患者さんとの触れ合いを楽しんでおり
将来的に開業を検討していらっしゃいましたが、ご家族の事情もあり、今は時期尚早と判断し
一度はお断りしました。
しかし、医療法人側はB先生の誠実な人柄を高く評価しており
「数年後でも構わないので、是非とも検討してください」と熱心にアプローチを続け
先生も、理事長の思いに共感し、将来的には引き継ぎたいという思いが強まった結果
2年後に無事にクリニックを引き継ぎました。
まとめ
クリニックの承継は、まさに医師一人ひとりの状況や希望によって、その成り行きが大きく変わります。
しかし、ご希望の条件に合うクリニックが見つかれば、思っていたよりもスムーズに
継承が完了することも少なくありません。
「どうしても新しいクリニックを立ち上げたい!」という強い思いをお持ちの先生もいらっしゃるでしょう。
しかし、既存のクリニックを継承する道も、十分に魅力的な選択肢の一つです。
ご自身のキャリアプランや今後のビジョンと照らし合わせながら
複数の可能性を検討してみることをおすすめします。
事業承継を円滑に進めるために、引継ぎ時期を設定する必要がありますが
「売り手・買い手ともに納得できる時期」の調整が大切です。
お互いの考えをしっかりと伝えあい、すり合わせできるポイントを見つけることが成功の鍵です。
もし、事業承継でお困りであれば税理士のサポートを受けるのも一つの手です。
ペンデル税理士法人 医業経営支援部では、クリニックの事業承継に関するサポートを
行っておりますので、お気軽にご相談ください。
お問い合わせは、お問い合せフォームからどうぞ。

賃貸契約が個人契約の場合は、一度賃貸契約を終了し、再度締結することが一般的です。
この際、スケルトンに戻さずに、今の内装のまま賃貸契約を締結しますので、
可能であれば、設備面で不具合が出ていないかチェックする特約を定めるようにしましょう。
建物本体の不具合や、配管回りに不具合があれば
責任を明確にし、修繕を行う旨の記載があれば安心ですね。