こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
物価高が続くなか、賃上げ以外の方法でスタッフの待遇を改善したいとお考えの院長も多いのではないでしょうか。その一つとして有効なのが「食事補助」です。最近では、弁当の宅配や設置型の社食サービスなど、多様な食事補助サービスが登場しています。この食事補助は、一定の要件を満たせば、スタッフの給与として課税されずに(非課税で)提供することができます。今回はそのためのルールを解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

食事補助が非課税となる2つの要件
役員や従業員に提供する食事について、以下の2つの要件を
両方とも満たしていれば、給与として課税されません。
- 役員・従業員が食事価額の半分以上を負担していること
- 法人(医院)の補助額が、1か月あたり3,500円(税抜)以下であること
もし、この要件を満たさない場合は、食事の価額から本人負担額を差し引いた金額が給与として課税対象になります。
具体例で見る課税・非課税の判定
以下のケースで考えてみましょう。
- 提供内容 : 1食500円(税込)の弁当と食堂
- 本人負担 : 1食300円
- 提供日数 : 弁当15日/月、食堂5日/月
STEP1.法人(医院)の月間補助額を計算
- 弁当の補助額 : (500円-300円)×15日=3,000円
- 食堂の補助額 : (500円-300円)×5日=1,000円
- 月間補助額の合計 : 4,000円
STEP2.月間補助額(税抜)を計算し、3,500円以下か判定
- 弁当(軽減税率8%) : 3,000円÷1.08≒2,777円
- 食堂(標準税率10%) : 1,000円÷1.1≒909円
- 税抜補助額の合計 : 3,686円(小数点以下切り捨てで3,680円)
判定結果
このケースでは、本人負担が半分以上(300円/500円)という要件①は満たしていますが、税抜の月間補助額が3,500円を超えている(3,680円>3,500円)ため、要件②を満たしません。
その結果、
補助額の合計である4,000円全額が給与として課税されます。
【注意点】
残業時の食事
残業や宿日直の際に提供する食事については、無償で提供しても非課税として扱われます。
現金支給は全額課税
食事代として現金を支給する場合は、全額が給与課税の対象となりますのでご注意ください。
まとめ
食事補助は、院長にとって「コストを抑えながらスタッフ満足度を上げられる制度」であり、スタッフにとって「お得に昼食を利用できる福利厚生」となります。
ポイントは「本人が半分以上負担すること」「医院の補助は月3,500円(税抜)まで」の2点だけ。
賃上げ以外の待遇改善策として、ぜひ検討してみてください。制度設計や税務上の扱いについては、ペンデルグループまでお気軽にご相談ください。
【参考】
国税庁タックスアンサー No.2594 食事を支給したとき
食事を支給したときの非課税限度額の判定
国税庁質疑応答事例 使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合