こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部の親泊です。
日々の診療、誠にお疲れ様です。分刻みのスケジュールの中、患者と真摯に向き合い、
地域医療に貢献されているお姿には、ただただ頭が下がる思いです。
しかし、そんな多忙な院長の頭を悩ませるのが、
「経理」や「税金」の世界ではないでしょうか。
「仕入税額控除」――打合せの中で聞いたことがある言葉だけど…なんだったかな。
「税理士に任せているから大丈夫じゃないの?」そうお考えになるのも無理はありません。
ですが、もし、この「仕入税額控除」の基本をサクッと理解したいのであれば、
このコラムは、そんな多忙な院長のために、どこよりも分かりやすく、
「仕入税額控除」を説明するために生まれました。ランチを食べながら気軽にお読みください。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

そもそも仕入税額控除って何? ~秒速理解!院長のための消費税講座~
「仕入税額控除って、いったい何者なんです?」…はい、お答えしましょう!
一言で申し上げるなら、これは「払いすぎた消費税、取り戻します!」という、
とってもありがたい制度なんです。
普段、クリニックでは、医薬品の購入、医療機器のリース、場合によっては
外部業者への検査委託など、さまざまな「仕入れ」が発生していますよね。
これらの支払いには、多くの場合、消費税が含まれています。
一方で、患者からいただく診療報酬(自由診療分など)にも
消費税が含まれている場合があります(※保険診療は原則非課税です)。
ここでポイントです!
消費税というのは、最終的に消費者が負担する税金。
事業者は、患者から預かった消費税を、代わりに国に納める役割を担っています。
でも、仕入れの際に支払った消費税はずっと事業者の負担なのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません!
預かった消費税から、支払った消費税を差し引いて納付する、
これが消費税納税の基本的な仕組み。
そして、この「支払った消費税を差し引くこと」こそが、「仕入税額控除」なのです。
例えば、患者から100万円の消費税を預かったとしましょう(あくまで例ですよ!)。
そして、医薬品の仕入れなどで60万円の消費税を支払っていたとします。
この場合、納める消費税は、100万円から60万円を差し引いた40万円となるわけです。
もし仕入税額控除がなければ、
100万円をまるまる納めなければならないとしたら…ゾッとしませんか?
そう、仕入税額控除は、クリニック経営におけるキャッシュフローを健全に保つための、
縁の下の力持ちのような存在。
知っておいて絶対に損はない、いえ、むしろ知らないと大損しかねない重要知識なのです!
どうです? 少し身近に感じていただけましたでしょうか?
インボイス制度で激変!? ~仕入税額控除の「今」と「昔」を徹底比較~
さて、院長。「仕入税額控除のキホン」はご理解いただけたかと思います。
ですが、ここで一つ、最近よく耳にするようになったキーワードが登場します。
そう、「インボイス制度」です!
「なんだか面倒くさそう…」なんて声が聞こえてきそうですが、大丈夫。
ここでは、この新制度が仕入税額控除にどんな影響を与えたのか、
その「ビフォー&アフター」をスッキリ整理していきましょう。
インボイス制度が始まる前は、ざっくり言うと、帳簿や請求書に記載された
支払った消費税額に基づいて仕入税額控除ができていました。
極端な話、相手が免税事業者(消費税の納税義務がない事業者です)であっても、
こちらが支払った消費税分は控除の対象にできたのです。
おおらかな時代でしたね。
ところが! インボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)が始まった後は、
そうはいかなくなりました。
原則として、「適格請求書(インボイス)」という、特定の記載要件を満たした
請求書がないと、仕入税額控除が認められなくなってしまったのです。
そして、このインボイスを発行できるのは、
「適格請求書発行事業者」として登録した課税事業者だけ。
つまり、これまでお付き合いのあった免税事業者からの仕入れについては、
インボイスをもらえないため、原則として仕入税額控除ができなくなる、という
大きな変化があったのです。
これは、クリニックの経費管理にもじわじわと影響してくる可能性大!です。
例えば、これまでお願いしていた清掃業者が免税事業者だった場合。
インボイス制度前は、その支払いにかかる消費税も控除できていたのに、
制度後はインボイスがなければ控除できない…となると、
実質的な負担増に繋がりかねません。
もちろん、経過措置など、細かなルールはありますが、
「インボイスがないと、仕入税額控除がフルで使えないかもしれない!」という
インパクトは、ぜひとも押さえておいてください。
まさに、仕入税額控除のルールが、ガラッと変わった瞬間と言えるでしょう。
この変化、クリニック運営にも無関係ではいられませんよ!
光と影を徹底解剖! ~仕入税額控除、メリットとデメリットは表裏一体~
どんな制度にも、メリットがあれば、デメリットが存在するもの。
もちろん、「仕入税額控除」も例外ではありません。
ここでは、院長が知っておくべきメリットとデメリットを、包み隠さずお伝えいたします。
まず、最大のメリットは何と言っても「節税効果」です!
これはもう、言わずもがな。第1章でお話しした通り、支払った消費税が控除されることで、
納めるべき消費税額が減るわけですから、
クリニックのキャッシュフローにとっては、まさに恵みの雨。
特に、高額な医療機器の購入や、大規模なリフォームなど、大きな設備投資をする際には、
この仕入税額控除の恩恵は計り知れません。
「控除があるから、思い切った投資ができる!」
そんな院長もいらっしゃるのではないでしょうか。
まさに、経営判断を後押しする、力強い味方と言えるでしょう。
では、一方でデメリット、あるいは注意すべき点は何でしょうか?
これは特に、インボイス制度導入後の状況を考えると、より鮮明になります。
一つは、「事務負担の増加」の可能性です。
先ほどお話しした「適格請求書(インボイス)」の保存や管理、
これがなかなか手間がかかるのです。
受け取った請求書がちゃんとインボイスの要件を満たしているかチェックしたり、
番号を管理したり…。
日々の診療でお忙しい院長先生やスタッフの方々にとっては、
新たな悩みの種になりかねません。
そしてもう一つ、
これは間接的なデメリットかもしれませんが、「取引先の選定に影響が出る可能性」です。
インボイスを発行できない免税事業者との取引では、仕入税額控除が受けられないとなると、
同じサービスや物品でも、実質的なコストが変わってきてしまう。
そうなると、「インボイスを発行してくれる会社にお願いしようかな…」という流れが
生まれるのも、自然なことかもしれません。
これは、これまでの取引関係にも影響を及ぼす可能性を秘めています。
いかがでしょう? 仕入税額控除は、単に「お得な制度」という一面だけでなく、
その裏側には、日々の業務や取引関係にも関わる、少し厄介な側面も持ち合わせているのです。
なぜ?どうして? ~控除対象外消費税が発生するカンタンな理由~
「あれ? 仕入れで消費税を払ったはずなのに、全部控除できるわけじゃないの?」…
そうなんです、院長。
実は、支払った消費税のすべてが仕入税額控除の対象になるわけではない、というケースが
存在します。
これが、いわゆる「控除対象外消費税」というもの。
なんだか、仲間外れにされたみたいで、ちょっと寂しい響きですよね。
でも、これにはちゃんとした理由があるのです。
ここでは、その「なぜ?」を、できるだけ簡単に解き明かしていきましょう!
一番イメージしやすいのは、
「そもそも消費税がかからない取引(非課税取引)に関連する仕入れ」の場合です。
例えば、クリニックの収入の大部分を占める保険診療。
これは、社会政策的な配慮から消費税が非課税とされています。
もし、この保険診療にのみ使用する目的で何かを仕入れた場合、
その仕入れにかかる消費税は、原則として仕入税額控除の対象にはなりません。
なぜなら、売上(保険診療収入)が非課税なので、
それに対応する仕入れの消費税も控除しない、という考え方が基本にあるからです。
「売上が非課税なら、仕入れも非課税扱いね」というイメージです。
また、少しややこしいのですが、「課税売上割合」というものも関係してきます。
これは、クリニックの総売上のうち、消費税が課税される売上(例えば自由診療や
物品販売など)がどれくらいの割合を占めるか、という指標です。
この課税売上割合が低い(つまり、非課税売上である保険診療の割合が非常に高い)場合や、
年間の課税売上が一定額以下の場合などには、支払った消費税の一部または全部が
控除できなくなることがあるのです。
なんだか、数学のテストみたいで頭が痛くなりそうですが、
「クリニックの収入構成によっては、控除できる消費税額が変わってくるんだな」くらいに
覚えておけば大丈夫です。
さらに、接待ゴルフの費用や、飲食代など、一部の交際費等に含まれる消費税も、
控除対象外となる場合があります。
これは、「それって、事業に直接必要なの?」という視点が影響しているのですね。
このように、控除対象外消費税が発生する理由はいくつかありますが、共通しているのは、
「消費税の公平な負担」という考え方です。
難しく考えすぎず、
「なるほど、そういうルールなのね」と、まずは受け止めてみてください。
そして、「うちのクリニックの場合はどうなんだろう?」と少しでも気になったら、
それこそが専門家である税理士の出番です!
院長のお悩み解決! ~仕入税額控除 まるわかりQ&A~
さて、ここまで仕入税額控除の基本からインボイス制度の影響、メリット・デメリット、
そして控除対象外消費税についてお話ししてきました。
きっと、院長の頭の中も、かなりスッキリ整理されてきたのではないでしょうか?
とは言え、まだまだ「?」が浮かんでいる先生もいらっしゃるかもしれません。
そこでこの最終章では、院長からよく寄せられる疑問に、Q&A形式でお答えしていきましょう!
Q1. 簡易課税制度っていうのも聞いたけど、仕入税額控除とどう違うの?
A1. いい質問ですね、先生!
簡易課税制度は、ざっくり言うと、売上にかかる消費税額に、業種ごとに定められた
「みなし仕入率」を掛けて、とっても簡単に仕入税額控除額を計算する方法です。
実際の仕入れにかかった消費税額を一つ一つ集計する必要がないので、
事務負担はグッと軽くなります。
ただし、この制度を選べるのは、基準期間(ざっくり2年前)の課税売上高が
5,000万円以下の事業者に限られます。
そして一度選択すると、原則2年間は継続しなければなりません。
実際の仕入れが多いクリニックでは、原則通りに仕入税額控除を計算した方が
有利な場合もありますし、逆に事務負担を減らしたいというニーズが強ければ
簡易課税が向いていることも。
どちらが良いかは、クリニックの状況次第、ということになります!
Q2. 高額な医療機器を買ったんだけど、これも仕入税額控除の対象になるの?
A2. もちろんです、先生!
数百万円、時には数千万円もする医療機器の購入は、クリニックにとって大きな投資。
この購入にかかる消費税も、原則として仕入税額控除の対象になります。
金額が大きいだけに、控除できるとなると節税効果も絶大ですよね。
ただし、その医療機器が保険診療にしか使われないのか、自由診療にも使うのか、といった
使用実態によって、控除できる金額が変わってくる可能性があります。
まさに、第4章でお話しした「控除対象外消費税」の論点が絡んでくるわけです。
高額な資産を購入する際は、事前に税理士に相談して、
仕入税額控除がどの程度見込めるのか確認しておくのが賢明です!
Q3. インボイス制度が始まって、取引先が免税事業者だと、もう絶対に控除できないの?
A3. 原則としてはその通りなのですが、実は経過措置というものが存在します。
免税事業者からの仕入れについても、インボイス制度開始から数年間は、
一定割合を仕入税額控除として認める、という救済策のようなものです。
ただ、この割合も段階的に引き下げられていきますし、帳簿への記載要件など、
細かいルールがあります。
なので、「じゃあ、まだ大丈夫か」と安心しきってしまうのは少し危険。
やはり、基本はインボイスの保存と心得ておくのが良いでしょう。
そして、この経過措置も2029年9月30日で終わります
(2026年税制大綱により、2年間延長予定:2025年12月追記)。
長期的な視点で、取引先との関係性やコスト管理を考えていく必要がありますね。
いかがでしたでしょうか? これで、仕入税額控除に関するモヤモヤも、
かなり晴れたのではないでしょうか。
ほんの少しの知識が、クリニック経営を大きく左右することもある。
それが、税金の世界の奥深さであり、面白さでもあるのです!
おわりに
ここまでお付き合いいただき、心より感謝申し上げます!
「仕入税額控除」という、すこし取っつきにくいテーマでしたが、
少しでも「なるほど!」と腑に落ちる瞬間があったなら、これほど嬉しいことはありません
日々の診療で時間に追われる先生にとって、会計や税務は後回しになりがちな
分野かもしれません。
「知っている」と「知らない」では、見える景色が大きく変わります。
特に、変化の激しい現代においては、常に新しい情報をキャッチし、
柔軟に対応していく姿勢が不可欠です。
そして…もし、「もっと具体的にうちのクリニックのケースで相談したい!」
「やっぱり専門家のサポートが欲しい!」そう感じられたなら、
どうぞお気軽に私たちペンデル税理士法人へお声がけください。
私たちは、クリニック経営に精通した税務のプロフェッショナル集団です。
院長先生お一人お一人の状況に寄り添い、最適なアドバイスでサポートいたします。
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院長からのご連絡を、心よりお待ちしております!