こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
日中は汗ばむ陽気となり、少しずつ梅雨の気配も近づいてまいりました。
日々の忙しい診療の合間を縫って進める相続手続きは、院長先生にとって大きな負担です。
打合せに時間を割き、「自分の分の相続税は完納した。これで一安心だ」
もしそうお考えであれば、あらかじめ知っておいていただきたい制度があります。
それが、相続税法第34条に規定されている「連帯納付義務」です。
相続税は各自が取得した財産に応じて個別に納税するのが原則ですが、
実は他の相続人の納税状況が、ご自身の負担に影響を及ぼす可能性があります。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
共同相続人間に生じる連帯納付義務とは
これは、相続財産全体を基礎として課税される仕組みの中で、税収確保の観点から
設けられている制度です。相続人や受遺者は、一定の場合に他の取得者の相続税について
連帯納付義務を負うことがあります。
ただし、税務署がいきなり請求してくるわけではありません。
現在は厳格なルールに基づいて運用されており、税務署は税金を滞納している人がいる場合、
まずはその本人の財産から徴収を行います。
そこまでしてもなお完納に至らない場合に初めて、すでに自身の納税を済ませている
他の相続人等に対して連帯納付義務に基づく履行を求めることがある、という
補充的な仕組みになっています。
【ケーススタディ】
長男(院長)と次男は納税を完了したが、三男が資金繰り悪化等により滞納してしまった。
この場合、税務署はまず三男への徴収を行ったうえで、必要に応じて完納している院長や
次男へ納付請求を行うことがあります。
※他人の税額を連帯納付した場合は、本来の負担者(三男)に対して
支払った金額を請求する「求償権」が認められています。
なお、連帯納付義務の負担は相続により実際に受けた経済的利益の範囲内に限定されます。
このように制度自体は納税者を守るために整理されていますが、相続人間の納税資金に
大きな偏りがある場合などには、なお注意が必要です。
なぜ「事業承継を伴う相続」で注意が必要なのか
医療機関の承継を伴う相続では、事業用資産への偏在などから、構造的に納税資金の偏り
(現金のアンバランス)が生じやすい傾向があります。
- 経営資源の集中による、現金の偏り
医業継続のため、院長である長男が「クリニックの敷地・建物」や、
持分のある医療法人の場合は「出資持分」といった主要資産を相続するケースが多く、
経営に関与しない他の兄弟には手元のキャッシュ(現金)が十分に渡らない遺産分割に
なることがあります。
- 出資持分評価の高額化による、納税資金の不足
長年経営されてきた(持分ありの)医療法人は、出資持分の評価額が想定以上に
高額化しているケースが多々あります。
経営を引き継がない相続人が、高額な持分の一部や、すぐに現金化しにくい不動産を
相続した場合、「税金は重いのに払う現金がない」という状況に陥りやすくなります。
- 親族間の合意は税務署には対抗できない
遺産分割協議書に「各自の税金は自己責任で負担する」と明記しても、
それは親族間の取り決めに過ぎません。
その合意だけを理由に税務署に対して連帯納付義務を免れることは
原則としてできません。
制度上の例外と実務的なリスク軽減策
この義務は、特定の要件下において履行請求が行われなくなったり、
消滅したりするケースがあります。
- 延納や納税猶予の活用
滞納している相続人が、正式に「延納」や事業承継税制等による「納税猶予」の許可を
受けている期間は、原則として他の相続人への履行請求は行われません。
- 相続放棄の影響
初めから相続放棄をした人は、原則として対象外となります。
- 期間による消滅
申告期限から5年を経過する日までに税務署から所定の通知等がない場合、
義務が消滅するケースもあります(※個別事情によるため専門家への確認が必要です)。
相続人全員が無理なく納税を完了するために
相続対策の真のゴールは、「後継者も、そうではない親族も、相続人全員が無理なく
納税を完了し、円満に承継を終えること」です。
そのためには、事前に各相続人の納税資金のバランスを確認し、
「全員が滞りなく払いきれる遺産分割案」をシミュレーションしておくことが
極めて重要です。
ペンデル税理士法人では、医業経営の現場を熟知した相続チームが、出資持分対策から
包括的な資産承継支援を行っております。
将来の相続トラブルリスクを軽減し、不安を安心に変えるために、
まずは現状のシミュレーションから始めてみませんか。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
国税庁:相続税の連帯納付義務
国税庁:延納・物納申請等