こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
医療法人が分院を展開したり、新たな介護事業所や訪問看護ステーションを別の市区町村に開設したりする場合、法人の地方税(法人住民税・法人事業税)の計算において「分割基準」という重要な考え方が登場します。
法人の地方税は、事務所等が所在する地方公共団体(都道府県・市町村)ごとに課税されます。そのため、複数の自治体にまたがって事業所を有する場合、法人全体の課税標準額を特定の基準で分割し、それぞれの自治体に納める税額を正確に算定しなければなりません。万が一この計算を誤ると、複数の自治体に対して修正申告等を行う必要が生じ、多大な事務負担が発生してしまいます。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
■ 医療法人の分割基準はどう計算する?
分割に用いる基準は税目や業種によって異なります。 法人住民税(法人税割)の分割基準には、業種を問わず「従業員の数」が使用されます。
一方、法人事業税の場合、医療保健業は、法人事業税の分割基準上「非製造業等」に該当するため、「事務所等の数」と「従業員数」をそれぞれ2分の1ずつ用いて計算します。
■ 「事務所等の数」の数え方
事業税の計算で用いる「事務所等の数」は、単純な拠点数ではありません。事業年度の「各月末日」現在における事務所等の数を合計して算出します。たとえば、事業年度を通じて1年間存在していれば、各月末現在の数を合計するため「12(1か所×12か月)」となります。年度の途中で開設・閉院した場合はこの合計数が変わるため注意が必要です。
■ 実務で最も迷いやすい「従業員の数」のカウント
実務上、最も問い合わせが多く、かつ間違えやすいのが「従業員の数」のカウント方法です。
原則として、事業年度終了の日現在において各事務所等に勤務する従業者数で判定します。(ただし、期中に人数が著しく変動し、各月末の従業者数のうち、最高人数が最低人数の2倍を超える場合には、各月末の平均人数を用いる補正計算が必要です)。
特に医療機関で注意すべきは、「誰を従業員に含めるか」という点です。給与等の支払いを受けるべき者が広く対象となるため、正職員だけでなく、アルバイト、パートタイム職員、嘱託社員も「従業員数」に含める必要があります。
さらに見落としがちな点として、給与等の支払を受ける非常勤役員(理事・監事など)や、派遣会社から受け入れている派遣社員(派遣先で勤務する者)も人数のカウントに含めなければなりません。また、事業年度末日付けの退職者も、事業年度終了の日現在に在籍しているためカウントに含まれます。
一方で、連続1か月以上の休職者(産休・育休・病休など)や、他社へ出向させている者は人数から除外します。
分院展開による事業拡大はクリニックが成長している証ですが、それに伴う税務申告は一段と複雑化します。法人住民税や事業税の正しい分割申告や、分院展開を見据えた税務体制の整備については、医療機関の会計・税務を専門的にサポートするペンデル税理士法人の医業経営支援部へ、ぜひお気軽にご相談ください。

(参考)
東京都主税局:「分割基準ガイドブック」