こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部の親泊です。
先生、日々の診療、本当にお疲れ様です。患者様の健康を第一に考え、分刻みのスケジュールをこなす毎日の中で、クリニックの「経営」と向き合う時間を確保するのは、至難の業かもしれません。特に、「会計」や「数字」と聞くと、ついつい「それは税理士の仕事だろう」と、少し距離を置いてしまいたくなる気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、先生。もし、クリニックをより早く、より良く、盤石な経営基盤に乗せたいと願うなら、コンパスなしに進むわけにはいきません。その重要な指針となるのが、今回ご紹介する「予実管理」なのです。「また難しい会計用語か…」と、ページを閉じようとした先生、どうかもう少しだけお付き合いください!
このコラムは、「数字アレルギー」の院長のために書きました。専門用語は極力使わず、予実管理の本質と、明日からできる実践のヒントを、わかりやすくお伝えしていきます。
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(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

そもそも「予実管理」とは、なんだろう?
さて、院長。「予実管理(よじつかんり)」、なんだか難しそうに聞こえますか? でも大丈夫、言葉を分解すればシンプルです。これは「予算(よさん)」と「実績(じっせき)」を「管理(かんり)」すること、ただそれだけです。
もう少し具体的に見てみましょう。まず「予算」。これは「未来の計画図」です。「来月は売上〇〇円を目指そう」「経費は△△円以内に抑えたい」という、クリニックが進むべき方向を示す目標数値のこと。旅行前に「交通費はこれくらいかな」と計画を立てる感覚に近いですね。ポイントは、具体的な数字にすることです。
次に「実績」。これは「結果報告書」です。「実際に売上は〇〇円だった」「経費は△△円かかった」という、過去の事実を示す数値。計画通りに進んだか、それとも違ったのかを確認する材料ですね。
そして、一番のポイントが「管理」。これは、計画(予算)と結果(実績)を「比較して、分析し、次へ活かす」活動全体を指します。「予算と実績、どれくらい差があるかな?」「なぜ差が出たのだろう?」「では、次はどう改善しようか?」と考えること。この比較・分析・改善のサイクルこそが、予実管理の心臓部であり、クリニック経営をより良くしていく力となります。
これは税理士任せにするだけのものではありません。むしろ、院長ご自身が経営の舵取りをする上で、絶対に把握しておきたい情報です。「数字はちょっと…」という先生も、まずはこの「計画と結果を見比べて、考える」というシンプルなことから、始めてみましょう。
なぜ予実管理が必要なのか?
「予実管理が計画と結果を見比べることなのは分かったけど、具体的にどんないいことがあるの? 面倒くさそうだし…」と感じる院長先生もいらっしゃるかもしれません。確かに少し手間はかかります。しかし、その手間をかけるだけの大きなメリットが予実管理にはあります。これは単なる税金計算のためではなく、クリニック経営そのものを強化するための重要な活動なのです。
では、具体的にどんなメリットがあるのでしょう?
- 問題の早期発見
毎月、計画(予算)と結果(実績)を比べていれば、「あれ? なんだか経費が多いぞ」「思ったより売上が伸びていないな」という経営の変化、つまり問題の芽に早く気づけます。クリニックの定期健診と同じで、早期発見・早期対処が大切です。 - 的確な経営判断
「新しい機器を導入すべきか?」「スタッフを増やす余裕はあるか?」という重要な判断をする際、予実管理のデータが客観的な根拠を与えてくれます。勘や経験だけに頼らない、数字に基づいた的確な判断が可能になります。 - 目標達成への意識向上
「今月の売上目標まであと少し!」など、具体的な目標(予算)と現状(実績)が明確になれば、院長だけでなく、スタッフのモチベーションアップにも繋がります。クリニック全体で目標に向かう一体感が生まれるかもしれません。 - 精度の高い将来計画
過去の予実データは、次回の予算を立てる際の貴重な道しるべとなります。「去年はこの時期にこの費用が増えたな」「この売上はもっと伸ばせそうだ」という分析が、より現実的で効果的な未来計画を可能にします。
このように、予実管理はどんぶり勘定を防ぎ、現状を正確に把握し、未来への舵取りを確かなものにするための必須ツールです。忙しい院長だからこそ、このツールを活用して、効率的で強いクリニック経営を目指しましょう。
予実管理は、どうおこなうのか
「よし、予実管理の重要性は分かった! でも、何から手をつければ…?」
ご心配なく。基本的な流れは、たった3つのステップで始められます。難しく考えず、まずはやってみましょう!
ステップ1:未来を描く「予算」を立てる! まずは計画から。完璧を目指さず、ざっくりでもOKです。
- 売上予算: 過去の実績などを参考に「来月はこれくらい」という目標数値を設定。保険・自費など項目別に立てると、後で分析しやすくなります。
- 経費予算: 人件費、医薬品消耗品費、広告宣伝費、など主な項目で「これくらいに抑えたい」目安を設定。毎月ほぼ固定の費用と、変動する費用を意識すると、より現実に近くなります。 ポイントは、現実的な範囲で、少しだけチャレンジングな目標を設定することです。
ステップ2:現実を知る「実績」を把握する! 次に、実際の結果を集計します。日々の経理ができていれば、ここは比較的スムーズなはずです。
- 売上実績: 実際にいくら売上があったか。
- 経費実績: 実際にいくら経費がかかったか。 項目別に把握しましょう。もし日々の数字の整理が大変なら、税理士に相談して、効率的な方法を教えてもらうのも手です。正確な実績把握が全ての土台です。
ステップ3:未来につなげる「比較・分析」をする! さあ、ここが最も重要です! ステップ1の「予算」とステップ2の「実績」を、項目ごとに比べます。
- 予算と実績の差は?(達成? 未達?)
- なぜ、その差が出たのか?(想定外の出費? 患者数の変動? 計画の見込み違い?)
- その結果から何が言えるか?(改善点は? 良かった点は?) ただ数字を眺めるのではなく、「なぜ?」を考えることが経営改善のヒント探しです。そして、その分析結果を基に「では、次はどうしよう?」と、具体的な行動計画や予算の見直しに繋げるのです。
この「予算立て→実績把握→比較・分析」の3ステップを、毎月繰り返す。これが予実管理の基本サイクルです。開業当初は、できるだけ毎週行うようにしましょう。
ここが肝心!予実管理を成功させる3つのポイント
予実管理の流れは掴めましたか?しかし、ただ始めるだけでは不十分。せっかくの取り組みを経営にしっかり活かすためには、いくつかの重要なコツがあります。ここでは、予実管理を成功に導くための3つのポイントを、ぎゅっと凝縮してお伝えします!
ポイント1:無理なく、続けられる仕組みを作る!
これが最重要かもしれません。どんなに素晴らしい計画も、継続できなければ意味がありません。院長先生が一人で抱え込まず、スタッフや税理士と協力し、毎月続けられるシンプルな仕組みを作りましょう。
- 役割分担: 誰が何をするか明確に。
- 簡単なフォーマット: 最初は主要項目だけで大丈夫。Excelやスプレッドシートで十分です。
- 定例化: 「毎月〇日にチェック」と決めて習慣へ。 「完璧」より「継続」を意識してください。
ポイント2:「なぜ?」をとことん掘り下げ、原因を分析する!
予算と実績に差額(差異)が出た時、「まあ、いっか」で流してはダメ! 「なぜ、この差が出たのだろう?」と、その原因をしっかり考えることが大切です。
- 売上未達なら、患者数が減った? 単価が下がった?
- 経費超過なら、急な出費があった? 無駄遣いがあった? 原因が分かれば、打つべき手が見えてきます。数字の裏にある「なぜ?」を探ることで、本質的な経営課題に気づけるのです。
ポイント3:分析結果を、必ず次のアクションにつなげる!
分析して「なるほど!」で終わっては、何も変わりません。分析から見えた課題や好材料をもとに、「では、具体的にどうするか?」という行動計画に落とし込み、実行することがゴールです。
- 売上改善策、経費削減策を具体的に考える。
- 次回の予算設定に、今回の反省点を活かす。 予実管理は「計画→実行→評価→改善」のPDCAサイクルそのものです。分析を行動に変え、それを続けること。これが、経営を強化する鍵となります。
院長のギモンを解消!予実管理Q&A
さて、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。最後に、院長が抱きがちな予実管理に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えしていきましょう。これで、さらにスッキリするはずです!
Q1. 日々の診療で手一杯!予実管理なんてやる時間、正直ないんですが…
A1. そのお気持ち、痛いほど分かります! だからこそ、最初から100点満点を目指さないでください。まずは気になる1~2項目(例:来院患者数と検査件数だけ)から、簡単な比較を始めてみてはいかがでしょうか? Excelが苦手ならノートに手書きでも十分です。税理士に資料作成や分析のコツを聞くのも良いでしょう。スモールスタートで、「続けること」を最優先にしましょう!
Q2. 税理士にお任せしてるから、それで十分じゃないですか?
A2. 税理士は会計・税務のプロで、データ作成や専門分析は頼りになります。しかし!最終的な経営判断を下し、クリニックの進むべき道を決めるのは、院長ご自身です。税理士からの報告を「ふーん」で済まさず、「この数字が意味することは?」「クリニックとして次の一手は?」と、ご自身の頭で考えることが不可欠です。税理士とは経営のパートナーとして、数字について語り合えると理想的ですね。
Q3. 予算と実績が大きくズレたら、へこみそうです…
A3. 大丈夫です。予実管理は反省会ではありません。ズレが大きい時こそ、むしろ経営改善のビッグチャンス! なぜズレたのか?その原因を探ることで、今まで見えていなかった課題や、強みが浮き彫りになります。経費がかかり過ぎていたなら節約意識が生まれますし、売上が予想以上なら成功要因を伸ばせます。ズレは「変化のサイン」。前向きに捉えて次へ活かしましょう!
Q4. 予実管理に便利なツールってありますか?
A4. 一番手軽なのは、やはりExcelでしょう。基本的な表計算やグラフ作成で十分対応できます。無料テンプレートも豊富です。ただ、どんなツールも「使いこなせて、継続できる」ことが重要です。まずは身近なものから試し、必要ならステップアップを。もちろん、ペンデル税理士法人なら、先生に合った方法を一緒に考えます!
おわりに
最後までこのコラムにお付き合いいただき、誠にありがとうございます。「院長のための会計用語説明(予実管理)」、いかがでしたでしょうか? 「数字は苦手…」と感じていた先生にも、予実管理の重要性と、意外なほどのシンプルさ、そして経営改善への可能性を感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
予実管理は、決して専門家だけのものではありません。クリニックの現状を正しく把握し、未来への舵取りを確かなものにするための、院長自身の強力な武器なのです。今日、このコラムで学んだことを、ぜひ明日からのクリニック経営に活かしてみてください。まずは小さな一歩からで構いません。「先月の来院患者数と予算を比べてみようかな」「主要な経費だけでも予算を立ててみようかな」。その小さな行動の積み重ねが、数ヶ月後、一年後には、きっと大きな違いを生み出しているはずです。
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