こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
長年地域医療を支えてこられた「持分あり医療法人」の理事長先生におかれましては、
後継者不在などの理由から、第三者承継(M&A)を選択肢として検討されるケースが
増えています。
そのような中、最近「税金が大幅に増える前に法人売却の検討を!」といった、
M&A仲介会社からの案内を目にされたことはないでしょうか。
この背景にあるのが、富裕層向けの新たな税制である「ミニマムタックス
(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)」です。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
■「1億円の壁」対策として導入されたミニマムタックス
日本では、給与所得などには累進課税が適用され所得税率は最高で45%
(住民税や復興特別所得税等を合わせると約55%)の税率となります。
一方で、株式や医療法人の出資持分などの譲渡所得税率は、原則として一律15%
(同約20%)の分離課税です。
そのため、譲渡益などの金融所得の割合が高い場合には、所得が増えても全体の実効税率が
低下するケースがあるという、いわゆる「1億円の壁」が問題視されてきました。
この不公平感を是正するため、令和7年分所得税から新たに適用されるのが
ミニマムタックスです。
具体的には、基準所得金額(各種所得金額の合計額等)が「3億3,000万円」を超える場合に
適用の有無を判定することになります。
一定の調整後所得金額を基礎として計算した税額が通常の所得税額を上回る場合、
その差額を追加納付する仕組みです。
■医療法人の出資持分譲渡への影響とM&A業者の動向
持分あり医療法人の出資持分を第三者へ譲渡(売却)した場合、その利益は理事長個人の
「譲渡所得」に該当します。
長年地域医療を支え、内部留保が蓄積された医療法人では、この譲渡益が
数億円に達することも珍しくありません。
そして重要なのは、この譲渡所得も「ミニマムタックス」の合算対象になるという点です。
さらに注視すべきは、今後の段階的な基準の引き下げです。令和8年分(2026年分)までは、
基準所得金額が3.3億円超の高額所得者について追加納税の有無が判定されますが、
令和9年分(2027年分)からは、この下限が「1.6億円」にまで引き下げられます。
つまり、全く同じ金額の譲渡所得(売却益)であっても、令和9年以降に譲渡を実行すると、
ミニマムタックスの対象となる範囲が一気に広がり、税負担への影響が
大きくなる可能性があります。
一部のM&A業者が、「税金が跳ね上がる前に」と早期の売却検討を勧める理由は
ここにあります。確かにこの制度強化による影響は少なくありませんが、
今後の税制改正により細かな制度内容が見直される可能性もあるため、
常に最新情報の確認が重要です。
■煽りに乗らず、本質的な事業承継計画を
税負担は経営上の大きな課題ですが、税金対策だけを理由に
性急にM&Aを決断することは非常に危険です。
医療法人の承継は、スタッフの雇用確保や地域医療の継続、そして何より
理事長ご自身の引退後のライフプランに直結する重大な経営判断です。
事業の承継方法によっては、税務上の取扱いが大きく異なるため、慎重な検討が必要です。
出資持分の譲渡だけでなく、役員退職金の活用などを組み合わせることで、
全体の税負担を適正にコントロールする選択肢も存在します。
M&A業者からの提案や出資持分の取り扱いに少しでも迷われましたら、
豊富な医業支援実績を持つペンデル税理士法人の医業経営支援部へぜひご相談ください。
大局的な視点から、法人と理事長先生にとって最適な承継プランをご提案いたします。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
国税庁:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について
国税庁:特定の基準所得金額の課税の特例-極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(PDF)