こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
ペンデル税理士法人 医業経営支援部では、税務・労務・事業承継・M&Aなどの支援に加え、クリニック経営を取り巻く市場動向についても情報収集を行っています。
本稿では、医療関係者向けの勉強会で共有された情報を参考に、エイジングケア市場の動向と、NMN・NADをめぐる研究上の知見を整理します。
なお、NMNやNAD⁺の有効性・安全性については研究が進められている段階であり、特定の製品や投与方法を推奨するものではありません。自費診療への導入を検討する際は、医学的根拠、関連法令、製品の品質管理、患者さんへの説明方法などを総合的に確認する必要があります。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
拡大するエイジングケア市場とクリニックにおける論点
アンチエイジングやエイジングケア関連市場は、健康意識の高まりなどを背景に拡大傾向にあります。市場規模や成長率については、調査会社ごとに対象範囲や算定方法が異なるものの、さまざまなサービスが展開されています。
クリニックの自費診療においても、従来のメニューに加え、NMNやNADに関連する点滴、サプリメントの取り扱い、腸内細菌叢や遺伝子に関する検査と組み合わせたサービスなど、さまざまなアプローチが検討されています。
しかし、自費診療のメニューとして導入するにあたっては、医学的根拠を患者さんにどのように分かりやすく説明するかといった課題があります。エビデンスの整理と関連法令の遵守が、自費診療を検討する際の重要な論点となります。
また、これまで保険診療を中心としてきた医療機関が、新たに自費診療の導入を検討する場合には、診療メニューの設計、価格設定、患者さんへの説明方法、スタッフの役割分担、予約・会計を含む運営体制など、さまざまな準備が必要となります。
抗加齢研究で注目される「サーチュイン」と「NAD⁺」
抗加齢研究では、サーチュインと呼ばれる酵素群が注目されています。サーチュインの働きには、細胞内の補酵素・代謝関連物質であるNAD⁺が関与すると考えられています。
加齢に伴うNAD量の変化については、動物実験やヒトを対象とした研究などで報告がありますが、対象となる組織や研究条件によって結果は異なります。エイジングケアの分野では、現在もNAD⁺に関する研究が進められています。
このように、NAD⁺は細胞内の代謝や生理機能との関係が研究されている物質ですが、NAD⁺の量を増やすことが、そのまま抗加齢効果や特定の健康上の効果につながると確立されているわけではありません。研究結果を確認する際には、基礎研究、動物実験、ヒトを対象とした臨床研究を区別して捉えることが重要です。
NMNの投与方法に関する知見と法的留意点
現在、NAD⁺の前駆体としてNMNの研究が進められています。一方で、抗加齢効果や投与方法ごとの有効性・安全性については、対象者、投与量、期間などによって結果が異なります。現時点では、研究段階の知見として理解することが重要です。
投与方法については、経口、点滴、舌下などが検討されていますが、それぞれの体内動態や臨床的な意義は一様ではありません。現時点で、特定の投与方法が一律に優れている、または安全であると断定することはできません。
そのため、導入を検討する場合には、投与方法の違いだけでなく、使用する製品の区分、成分や含有量、品質管理、保管方法、想定されるリスク、患者さんへの説明内容などを確認する必要があります。
また、製品の区分や提供方法によっては、医薬品医療機器等法(薬機法)、医療広告規制、食品表示関連法令などの確認が必要です。導入時には、製品の表示、品質管理、仕入れ経路、広告表現などを個別に確認することが重要です。
なお、自由診療の内容をウェブサイト等で紹介する場合には、医療広告規制上の取り扱いについても、掲載内容や表示方法に応じた確認が必要です。具体的な診療内容や広告表現については、必要に応じて関連法令に詳しい専門家へ確認することも検討するとよいでしょう。
サプリメント導入時に確認したい品質管理の視点
自費診療でサプリメントを取り扱う際、仕入れ先や製造者から必要な情報を取得し、製品の品質や表示内容を確認することは、クリニックの信頼を守る上で重要です。
「日本製」と表示されていても、原材料の原産地や製造工程の範囲は製品ごとに異なります。原料の由来、最終加工地、製造所、品質試験の内容などを確認することが重要です。
また、表示されている成分量については、1日摂取目安量あたりの含有量、分析方法、試験成績書の有無などをあわせて確認するとよいでしょう。
そのほか、次のような事項も導入時の確認項目となります。
- 製造者・販売者の情報
- 原材料および成分の表示内容
- 保管方法・賞味期限・ロット管理
- 品質試験や規格試験の実施状況
- 健康被害や問い合わせが発生した場合の連絡体制
- パンフレットやウェブサイトにおける広告・説明表現
- 仕入れ契約や返品・回収時の対応
サプリメントを取り扱う場合には、単に製品を仕入れて販売するだけでなく、患者さんへの説明方法や、スタッフ間での案内内容も含めた運用体制を整備することが必要です。
検査等の活用とクリニックが提供できる価値
血中NAD関連指標などを測定する研究・検査サービスもみられますが、これらを活用する場合には、検査方法、基準値、再現性、臨床的な意義をあらかじめ確認する必要があります。
検査結果は、治療効果を直接保証するものではなく、生活習慣や健康状態を考える際の参考情報として扱うことが重要です。検査数値の変化のみをもって、健康状態の改善や抗加齢効果を判断できるとは限らない点にも留意が必要です。
数値結果などを参考にしつつ、医師の診察のもとで適切な対応を検討し、食事や運動を含めた総合的な生活習慣の指導を行うことが、患者さんにとって納得感のある診療体制の構築につながります。
医療機関が提供できる価値の一つとして、検査結果や生活背景を踏まえた説明、継続的なフォロー、必要に応じた医療的判断へのつなぎなど、多角的なサポート体制の構築が挙げられます。
自費診療の導入に向けて検討したい経営面のポイント
新たな自費診療メニューの導入にあたっては、医学的な情報収集だけでなく、関連法令の確認、事業計画の策定、価格設定、スタッフの労務管理、既存の保険診療との業務区分などを総合的に検討することが重要です。
特に、これまで保険診療を中心としてきた医療機関では、自費診療の導入に伴って、次のような点を整理する必要があります。
- 導入するサービスの目的と対象者
- 必要な設備・人員・外部委託の範囲
- 導入費用とランニングコスト
- 価格設定と収支見込み
- 予約・会計・カルテ・説明資料などの運用方法
- スタッフへの教育と役割分担
- 患者さんへの説明・同意取得の方法
- 広告・ウェブサイト・SNSなどの情報発信
- 事業を継続するための評価指標
自費診療の導入は、診療メニューを追加するだけでなく、院内の業務フローやスタッフの働き方、収支構造にも影響を及ぼします。導入前に、医療面、法務面、経営面を分けて検討し、それぞれの課題を整理しておくことが大切です。
ペンデル税理士法人では、クリニック経営に資する情報収集を続けるとともに、事業計画の立案や、経営面からのコンプライアンス体制の整備についても支援しています。
また、必要に応じて、自費診療の導入・運営に知見を有する外部事業者をご紹介することも可能です。ご紹介にあたっては、医療機関の方針や検討内容を踏まえ、導入目的や必要な支援内容を整理した上で、相談先を検討します。
なお、外部事業者の活用にあたっては、提供されるサービスの内容、費用、契約条件、医療機関側の役割分担などを事前に確認し、具体的な診療内容や医療上の判断については、医療機関において十分にご検討いただく必要があります。
クリニック経営に関する事業計画、労務管理、事業承継、自費診療の導入検討などの経営課題については、必要に応じてご相談ください。

(参考)
厚生労働省|医療法における病院等の広告規制について