こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部 親泊です。
前編では「税額」にポイントを絞りお伝えさせていただきました。
後編では、「拡大」と「承継」をポイントにお話していきます。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

② 分院開設や事業拡大を目的としたタイミング
クリニックを個人で経営している場合、
基本的に「1つの医院しか運営できない」という制約があります。
開業者=管理者=事業所得がすべて1つのクリニックに集中してしまうため、
複数のクリニックを持ちたい場合や、介護施設の運営をしたい場合には、
医療法人を設立する必要があります。
一般的に、医療法人を設立するには、原則1年間の診療実績が必要であり、
さらに申請してから認可が下りるまで約6カ月、
そして分院を開設するためには定款変更が必要で、こちらも約3カ月かかります。
つまり、医療法人化を進めるには、トータルでかなりの時間がかかります。
したがって、「将来的に分院を出したい。」と思っているのなら、
その時期から逆算して早めに医療法人の設立を検討することが賢い選択です。
もちろん、医療法人の設立と同時に分院を開設することも可能です。
しかし、ここで1つ注意が必要なことは、分院の経営が軌道に乗るまでは、
既存のクリニックの利益で資金を補わないといけないということ。
分院がしっかりと利益を出すまでの間、メインのクリニックがしっかり稼げているか、
ということが重要なポイントです。
したがって、開業してからあまり時間が経っていない場合や、まだ経営が安定していない場合は、
より慎重に考えた方が良いかもしれません。
無理して分院を開設し、全体の経営が苦しくなってしまうのは避けたいですからね。
しっかりとした計画と資金の見通しが立ってからがベストなタイミングです。
③ 事業承継を目的としたタイミング
「クリニックを子どもに継いでほしい」という考えを持っている先生も多いと思います。
個人でクリニックを経営している場合、事業を子どもに継承する際には
「譲渡」や「相続」が必要になり、これに伴って大きな税金がかかることがあります。
これがなかなか悩みのタネです。
しかし、法人化しておけば、理事長の変更手続きだけでスムーズに事業を継承できます。
お子さんが「クリニックを引き継ぎたい」という意思を持っていることが確認できたなら、
早めに医療法人化しておくと良いでしょう。
個人での譲渡や相続に比べ手間も少なく、税金面でもずっと有利になります。
さらに、お子さんが複数いる場合でも、法人化しておけば、公平に事業承継を進めることができます。
例えば、法人から開業資金を出して、それぞれが分院を開設すれば、
皆で協力しながらクリニックを拡大していくことができます。
これであれば、「誰がメインのクリニックを継ぐか」で揉めることもなく、
皆が納得できる形で事業を承継できます。
医療法人化のタイミングは?
医療法人化を『考える』タイミングは、「早ければ早いほどいい」ということが基本です。
経営と個人のライフプランを完全に切り離すことが難しいため、
余裕をもって検討・準備して法人化しておけば、個人の税金負担も軽減できますし、
将来的な事業承継もスムーズに進められるというメリットがあります。
ただし、タイミングを見極めるためには、しっかりと長期的な計画を立てることが重要です。
「とりあえず法人化してみよう」という軽いノリで進めると、後々大変なことになるかもしれません。
無理がない計画を立て、確信を持って「今だ!」と思ったときに
医療法人化を実行することがベストだと思います。
「医療法人化のタイミング」について、前編・後編でお話させていただきました。
医療法人化は、一度踏み出すと個人事業に戻ることが難しい大きな決断です。
先生方の大切なクリニックをより良い方向へ発展させるため、
慎重な計画と目的意識を持って取り組むことが重要です。
事業拡大や事業承継をお考えでしたら、
ぜひお気軽にペンデル税理士法人 医業経営支援部にご相談ください。
経験豊富なスタッフが、先生にとって最善の選択肢を、先生と一緒に明らかにしていきます。