こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
医療法人の運営において、理事や監事といった役員の選任は極めて重要です。しかし、もし役員が法人に内緒で、近隣に同様のクリニックを開設するなどのライバル行為をしたらどうなるでしょうか? このような事態を防ぐため、会社法には「競業避止義務」という重要なルールが定められています。医療法人についても、医療法により会社法の規定が一部準用されるため、理事には競業避止義務が課されると考えられています。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

競業避止義務とは?
競業避止義務とは、
取締役(医療法人では理事)が、自己または第三者のために、会社の事業と競合する取引を行うことを制限するルールです。
取締役は、法人の内部情報やノウハウ、顧客情報などを知り得る立場にあるため、その立場を利用して競合事業を行うと、法人に大きな損害を与える可能性があるからです。
承認が必要となる取引の3つの要件
役員が行う取引が以下の3つの要件にすべて該当する場合、
事前に株主総会(医療法人では理事会や社員総会)の承認を得なければ、会社法の準用規定に違反することとなり、法人に対して責任を負う可能性があります。
- 取締役自身が行う取引であること
担当業務に関わっているか否かにかかわらず、取締役(理事)という立場にある者すべての行為が対象です。 - 自己または第三者のためにする取引であること
どのような名義であっても、その取引による経済的な利益が役員自身や第三者に帰属する場合が該当します。 - 会社の事業の部類に属する取引であること
法人が実際に行っている事業と顧客が競合する可能性のある取引が対象です。 例えば、法人が計画・準備中の事業なども含まれる場合があります。
義務違反があった場合の対抗措置
もし、役員が承認を得ずに競業取引を行い、法人に損害が発生した場合、法人はその役員に対して以下のような措置を取ることができます。
- 役員(理事)の解任
- 損害賠償請求
- (場合によっては)競業行為の差止請求
まとめ
信頼して役員に就任してもらった人物が、競合相手になってしまう事態は避けたいものです。万が一のトラブルを防ぐためにも、役員就任時に競業避止義務について確認し、書面で合意しておくなどの対策が有効です。役員との契約や法人運営に関するルール作りでお悩みの場合は、お気軽にペンデルグループへご相談ください。