こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
クリニックの経費精算で、学会参加費や備品購入などをスタッフや院長ご自身が立て替えることは珍しくありません。ところが、インボイス制度のもとでは「領収書の宛名」が後々の経理処理に大きく影響してきます。
個人名の領収書でも立替払いとして処理する方法はありますが、税務上の説明や追加書類の作成が必要になるなど、手間やリスクが増えてしまうのが実情です。
だからこそ――「法人名でもらっておくのが安心!」 というのが、もっともシンプルで確実な対応策といえます。 今回は、その理由と院内で徹底すべきルールについてわかりやすく解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
なぜ「法人名またはクリニック名」の領収書が必要なのか?インボイス制度の大原則
消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則として「取引の相手方(仕入側)の名称」が記載されたインボイス(適格請求書)の保存が必要です。
ここでいう「名称」とは、法人の場合はその法人名、個人事業主の場合は屋号または事業主(院長)の氏名を指します。 院長先生やスタッフ個人の名前が記載された領収書(※個人事業主である院長先生自身の名前は除く)では、この要件を満たさず、そのままでは事業の経費として税務上のリスクを抱えることになります。
徹底したい院内ルール「支払いは法人名で」を習慣に
この問題を最もシンプルに解決する方法は、そもそも個人による立替払いを極力減らし、支払いを事業者名義に統一することです。以下のルールを院内で徹底するだけでも、経理の手間は大幅に削減されます。
【領収書の宛名】 支払いの際は、必ず以下の宛名で領収書を受け取るよう徹底しましょう。
- 法人の場合: 「医療法人社団〇〇会」など
- 個人事業主の場合: 「〇〇クリニック」といった屋号、または院長ご自身の氏名
【具体的な対策】
- 事業用クレジットカードの活用: 学会参加費やオンラインでの備品購入など、クレジットカードで支払う際は必ず事業用のカード(法人カードや、個人事業用のカード)を使用するよう周知します。
- 小口現金の設置: 少額の備品購入などは、院内に設置した小口現金から支払うようにします。
- 支払時の依頼を徹底: スタッフがやむを得ず現金で支払う際も、「領収書の宛名は『〇〇クリニック』でお願いします」と必ず伝えることを徹底してもらいましょう。
この習慣づけが、インボイス制度における最も確実で効率的な対策となります。
やむを得ずスタッフの個人名で支払った場合の「対処法」
とはいえ、出張先でのタクシー代など、どうしても法人名での領収書がもらいにくい場面もあるでしょう。そのように、やむを得ず個人名の領収書を受け取ってしまった場合に限り、例外的な対処法として「立替金精算書」を作成します。
この精算書は、「スタッフ個人が立て替えた費用が、事業の業務のために使われたものである」ことを証明するための書類です。
【必要な書類】
- スタッフ個人名のインボイス・領収書(のコピー)
- 立替金精算書(支払者、日付、内容、金額、支払先等を記載)
事業者の仕入税額控除が認めらるために、この2点をセットで保存するようにしましょう。
まとめ
インボイス制度下での立替経費の処理は、「①まず事業者名(法人名・クリニック名)で領収書をもらう、②それが無理なら立替金精算書を作成する」という優先順位で考えることが重要です。日々の少しの心がけで、後々の経理業務の負担を大きく減らすことができます。 院内での経費精算ルールの見直しや、立替金精算書のフォーマット作成などでお困りの際は、お気軽にペンデル税理士法人までご相談ください。