こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
院長や理事長が後継者に代表権を譲り、会長や相談役といった役職に就くことは、
事業承継の一般的なプロセスです。
このタイミングで退職金を支給する場合、税務上「実質的に退職した」と認められない場合、
支給した退職金が役員賞与とみなされ、損金として認められない(損金不算入となる)可能性
があります。
今回は、このような「分掌変更(役員の職務内容の変更)」に伴う役員退職金が、
税務上適正と認められるための3つの条件と注意点を解説します。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
「実質的な退職」と認められる3つのケース
法人税基本通達(9-2-32)では、役員の分掌変更が「実質的に退職したと同様の事情」と
認められる例として、次のようなケースが示されています。
- 常勤役員から非常勤役員になったこと
理事長が後任にクリニックを譲り、週1日の勤務の様に、非常勤勤務となった場合等。 - 取締役から監査役になったこと
- 分掌変更後の給与がおおむね50%以上減少したこと
給与の減少幅はあくまで目安ですが、半減以上の減少は職務内容が
大きく変わったことを示す有力な客観的指標とされています。
ただし、非常勤になっても代表権を持っていたり、実質的に経営上の主要な地位を
占めていたりする場合は認められませんのでご注意ください。
最重要ポイント:「経営上主要な地位」を占めていないこと
上記のいずれかの条件を満たしていても、退任後の役員が依然として
「法人の経営上主要な地位を占めている」と判断される場合、
退職が税務上の退職と認められない可能性があります。
過去の裁判例などから、以下のような事実があると「主要な地位にある」と認定される
可能性が高まります。
【NGと判断されやすい事例】
- 勤務形態
ほぼ毎日出勤し、退任前と同じ執務室で仕事をしている。 - 意思決定への関与
代表者会議など重要な会議に出席し続けている。 - 業務執行
稟議書や契約書などに決済印を押している。 - 対外的な役割
金融機関との資金調達交渉などを引き続き担当している。
まとめ:後継者への完全な権限移譲を
分掌変更による役員退職金を、適正に損金算入するためには、
後継者へ経営のバトンを完全に渡し、前任者は経営の第一線から明確に退く姿勢が
不可欠です。
形式的に役職を変えるだけでなく、職務権限や勤務実態を明確に変更し、
その内容を議事録や役員報酬規程、職務分担表などの文書で客観的に記録しておくことが
重要です。
事業承継を円滑に進めるためにも、計画的な分掌変更をご検討ください。
ペンデル税理士法人は、税務顧問を通じ、顧問先の皆さまの経営を長期的に支援しています。