こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
長年にわたり地域医療に貢献された理事長や院長が亡くなられた際、
医療法人としてその功績を称え、「社葬」や「お別れの会」を執り行うことがあります。
社葬は、故人を追悼する場であると同時に、事業承継を対外的に示し、
後継者(新理事長)を中心とした新体制を対外的に周知する機会となる場合もあります。
しかし、ここで問題となるのが
「どこまでの費用が法人の経費(損金)として認められるか」という税務上の線引きです。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
社葬費用の税務上の取扱い
法人税法基本通達では、
一般的に次のような場合に社葬費用を損金算入できるとされています。
- 故人の経歴、地位、法人の規模等から見て、社葬を行うことが
「社会通念上相当」であること。
- 法人が負担した金額が、社葬のために「通常必要と認められる範囲」であること。
具体的に「損金として認められる費用」と「認められない費用」は以下の通りです。
- 認められるもの(法人負担OK):
- 葬儀会場の設営費、使用料
- 新聞広告費(訃報広告)、通知状の作成・郵送費
- 祭壇、祭具の使用料
- 会葬者への粗品(礼状、返礼品)
読経料やお布施などは支払証憑がない場合も多く、
日時・支払先・金額を記録することが望ましいです。
(法人負担として相当かどうかは個別判断となります。)
- 認められないもの(遺族負担すべきもの):
- 密葬(親族のみの葬儀)にかかる費用
- 戒名料、法名料
- 墓地、墓石、仏壇の購入費用
- 香典返し(香典を遺族が受け取る場合)
税務調査で狙われる「お斎(おとき)」と議事録
特に注意が必要なのが、通夜や葬儀後の飲食(お斎、精進落とし)の費用です。
過去の裁決事例では、お斎(精進落とし)はケースによって判断が分かれ、
社葬の一部と認められない事例もあります。
対象者・目的・場所などにより判断が分かれる点に注意が必要です。
認められない場合、取引先への接待であれば「交際費」、
親族への接待であれば「役員賞与(または貸付金)」とみなされるリスクがあり、
親族への飲食提供が役員賞与と判断された場合には、
源泉所得税の徴収漏れを指摘される可能性があります。
また、社葬費用を法人の経費として適切に処理するためには、
取締役会(理事会)での決議と、その内容を議事録として残しておくことが重要です。
- 社葬を行うことの決議
- 葬儀委員長の選定
- 日時、場所、予算の決定
これらが正式な機関決定として記録されていなければ、
単に「遺族の葬儀代を会社が出しただけ」とみなされかねません。
香典の扱いはどうすべきか
一般的に、社葬であっても香典は「遺族」が受け取ります。
その代わり、香典返しも遺族が負担します。
もし法人が香典を受け取る場合は、法人の「雑収入」として計上し、
香典返しも法人の経費とします。
しかし、実務上は遺族が受け取るケースが圧倒的に多いため、
「香典は遺族、社葬費用は法人」という明確な区分けと、
事前の規定(社葬取扱規程)の整備が重要です。
まとめ
社葬を適切に執り行うことは、法人としての姿勢を示す上でも重要ですが、
税務リスクを無視しては後々のトラブルの元となります。
「どの範囲まで経費にできるか」「議事録はどう残すべきか」。
ペンデル税理士法人では、医療法人の事業承継・相続対策の一環として、
社葬に関する税務アドバイスも行っております。
万が一の時に備えて慌てないよう、事前の規定整備についてご相談ください。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
国税庁:No.5389 法人が支出した葬儀の費用(社葬費用)