こんにちは!ペンデル税理士法人医業経営支援部の親泊です。
クリニックの開業において、初期費用を抑えるために
「居抜き物件」や「中古の戸建て・ビル」を購入・賃借するケースが増えています。
また、長年経営しているクリニックでも、待合室の改装やバリアフリー化などの
リフォームは避けて通れません。
こうした工事を行った際、その費用を「その年の経費(修繕費)」として一括計上できるか、
それとも「資産(資本的支出)」として計上し、
何年もかけて減価償却しなければならないかは、その年の利益と税金に莫大な影響を与えます。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)
「修繕費」と「資本的支出」の境界線
税務上の判定基準は非常に複雑ですが、基本的な考え方は以下の通りです。
- 修繕費(一括経費):
- 通常の維持管理、原状回復のための費用。
- 壊れた部分を直す、定期的な壁紙の張り替えなど。
- 資本的支出(資産計上):
- 建物の価値を高める、または耐久性を増すための費用。
- 用途変更(建物としての利用目的が変わるレベルの改修)、避難階段の取付け、
高機能な設備へのグレードアップなど。
中古建物購入時のリフォームと耐用年数
特に注意が必要なのが、中古建物を購入してすぐにリフォームを行った場合です。
税務では、中古資産に適用できる短い耐用年数(見積耐用年数または簡便法)を使うことで、
早期に減価償却費を計上できるメリットがあります。
しかし、購入に伴うリフォーム費用(資本的支出)が多額になる場合、
このメリットが消滅する可能性があります。
- リフォーム代が「再取得価額」の50%を超える場合
そのリフォーム部分も含め、中古資産の耐用年数を使えず、
新品と同じ「法定耐用年数」で償却しなければなりません。
- リフォーム代が「取得価額」の50%を超える場合
購入した中古建物について簡便法((法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%)を
使うためには、リフォーム費用が「取得価額の50%以下」である必要があります。
50%を超えると、税務上“ほぼ新品に近い状態”と判断されるため、
簡便法が適用できなくなります。
20万円・60万円の判定基準
実務上は、工事内容が通常の維持・修繕に該当することを前提に、
以下の形式基準も判定に用いられます。
・一の工事が20万円未満であれば修繕費として扱える場合が多い。
・60万円未満、または取得価額の約10%以下であれば
修繕費として認められる傾向にあります。
(ただし、工事の実質内容が資本的支出に該当する場合は、
形式基準だけでは判断できません。)
区分判定でキャッシュフローが変わる
例えば、500万円の工事を行ったとします。
これを全額「資本的支出」として15年で償却する場合、
初年度の経費は約33万円にしかなりません。
しかし、工事内容を精査し、「ここは原状回復(修繕費200万円)」
「ここはグレードアップ(資本的支出300万円)」と明確に区分できれば、
初年度に200万円+償却費を経費化でき、適切に修繕費を計上することで、
過度な納税によるキャッシュアウトを抑えることができます。
この判断には、見積書の項目ごとの精査と、施工業者への適切な請求書作成依頼が必要です。
工事完了後は、項目の区分や請求書の再作成が難しくなります。
クリニックのリフォームや大規模修繕を計画される際は、
発注前に必ずペンデル税理士法人へご相談ください。
税務メリットを最大化するための工事区分の方法をアドバイスいたします。
(ペンデルへのお問い合せ はこちらから)
(参考)
国税庁:No.5402 修繕費とならないものの判定
国税庁:No.5404 中古資産の耐用年数