こんにちは!ペンデル税理士法人 医業経営支援部 親泊です。
前回は、承継のメリットデメリットをお話いたしました。
後編では、個人診療所と医療法人の承継ポイントをお話させていただければと思います。
(コラムの内容は公開時の法律等に基づいて作成しています)

1.個人診療所の承継
親族への承継
親族に診療所を引き継ぐ場合、まず考えるべきは土地や建物、医療機器などの事業用資産の
扱いです。これらを賃貸にするか、譲渡や贈与にするかによって、税務上の扱いが変わってきます。
特に、借主と貸主が生計を一にしているかどうかが重要です。
税務の詳細については、必ず顧問税理士に相談することをお勧めします。
また、スタッフの雇用についても決断が必要です。
既存のスタッフをそのまま雇うのか、それとも新しく採用し直すのか、事前に方針を
決めておくことが大切です。どちらにしても、スタッフとのコミュニケーションを
しっかりと取り、誤解やわだかまりが残らないように注意しましょう。
第三者への承継
第三者に診療所を承継する場合、追加で考慮すべきポイントとして営業権(のれん)の設定が必要です。
営業権とは、クリニックの潜在的な価値(超過収益力)を指し、譲渡時には土地や建物、
医療機器などの資産価値に営業権を加えた金額で売却することが一般的です。
この営業権の評価は非常に専門的な領域なので、M&Aの専門家に相談することが安心です。
さらに、各種契約の巻き直しも重要なポイントです。
賃貸借契約やリース契約の名義変更、そして、前院長による「廃業手続き」と
新院長による「開業手続き」も必要です。
具体的には、「診療所廃止届」「保険医療機関廃止届」の提出と、
「診療所開設届」「保険医療機関指定申請書」の提出が必要となります。
また、来院患者を継続して診療するため、診療の空白期間を避ける必要がありますが、
そのための遡及手続きで、一定の引継ぎ期間が必要になる場合がありますので
保健所・地方厚生局への確認は怠らないようにしましょう。
2.医療法人の承継
次に、医療法人の承継についてです。医療法人の場合は、個人診療所とは異なり
「開業」「廃業」といった手続きが不要です。承継は主に医療法人役員の交代によって完了します。
法人としての契約は、理事長が交代しても継続されますので、契約書などの内容確認も大切でしょう。
理事長の交代は、理事会で決議を行い、その後 2週間以内に理事長変更登記を行う必要があります。
また、関係各所にも届出を提出する必要があり、都道府県知事や法務局、税務署、保健所などへ
手続きが必要です。
親族への承継
さらに、平成19年4月1日以前に設立された「持ち分あり医療法人」の場合、出資持分の移転も重要です。
この出資持分の譲渡や贈与については、税務や法務上の影響が大きいため、専門家にしっかりと相談し、
事前に対策を練っておくことが不可欠です。
また親族への承継であれば、相続の形で手続きを検討することも可能であり、
納税額を抑えることも期待できます。
第三者への承継
第三者に医療法人を承継する場合も、やはり出資持分の評価が重要です。
また、財務の評価や、法務リスクの把握をきちんと行い、簿外債務がないかなどを確認することが必要です。
特に、出資持分の評価が適切に行われていないと、予期せぬリスクが発生する可能性があります。
以上が個人診療所と医療法人における承継の基本的な流れと注意点です。
承継は一筋縄ではいかないケースも多いですが、適切に準備をしておけばスムーズに進めることが可能です。
まとめると、個人診療所の承継では、親族や第三者に引き継ぐ際に、医療機器やスタッフ、
資産の扱い方がカギになります。
また、第三者への承継では営業権の設定も重要なポイントです。
医療法人の承継に関しては、理事長の交代と出資持分の移転がメインとなりますが、
個人診療所のように開業・廃業の手続きが不要な分、スムーズに進められる部分もあります。
ただし、持ち分の評価や財務の確認が必要なため、慎重に進めることが求められます。
以上、2回に分けて、クリニックや医療法人の承継に関する基礎的な内容をご説明いたしました。
承継は、それぞれの医療機関の状況や希望によって、複雑な手続きや準備が必要となる場合がございます。
適切な対策を講じることで、円滑な承継を実現し、クリニックの未来を安心して
後継者に託すことができるようになります。
もし、クリニックの承継や医療法人の相続について、ご不安な点やご不明な点がございましたら、
ペンデル税理士法人 医業経営支援部までお気軽にご相談ください。
皆様の大切なクリニックの永続的な発展を、専門的な視点からサポートさせていただきます。